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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.05.11 Fri » 「花と怪獣」のこと

 こんど出すモンスター小説アンソロジーの作品選びをしていたとき(追記参照)、ヘンリー・カットナーの「花と怪獣」“Beauty and the Beast” (1940)という作品を検討した。けっきょくこの作品は収録しなかったのだが、そのとき面白いことに気づいた。映画評論家の添野知生さんに話したら、その事実は知られていないので書いておいたほうがいい、と助言されたので、ここに認める次第。

 こういう話だ――
 金星探検に出たロケットが地球に帰ってくる。不幸にも深い山中に落下して、乗員は死亡。彼が持ち帰った謎の卵は、無知な農夫の手にわたる。農夫は金儲けをたくらんで卵を孵化させるが、生まれたのは「カンガルーのミニチュア版」のような奇妙なトカゲだった。
 奇妙なトカゲはどんどん大きくなり、やがて納屋におさまりきらなくなる。体が大きくなると同時に知能も高まり、自分の素性を思いだす。その爬虫類は、じつは金星の知的生物で、滅亡に瀕した金星人が未来を託した最後の一頭だったのだ。

 金星人は地球人と意思疎通を試みるが、地球人には怪獣にしか見えないので、挨拶しようとすると武器で攻撃されるばかり。当然ながら怪獣は逃亡し、狩りがはじまるのだった……。

 これとそっくりの映画がある。レイ・ハリーハウゼンの特撮で有名な「地球へ2千万マイル」(1957・別題「金星怪獣イーマの襲撃」)だ。原作のクレジットはどこにもないが、カットナーの作品と似すぎているので、原案としてパクったと想像される。こういうことは日常茶飯事だったのだろう。

 もっとも、小説のほうはひねりがあって、短篇小説らしいオチがつく。邦訳は〈ミステリマガジン〉1978年8月号に風見潤訳が、マイケル・パリー編のアンソロジー『キング・コングのライヴァルたち』(ハヤカワ文庫NV、1980年)に宇佐川晶子訳が載っているので、ご興味の向きは参照されたい。(2007年8月27日)

【追記】
 拙編のアンソロジー『千の脚を持つ男――怪物ホラー傑作選』(創元推理文庫、2007)のこと。


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