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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.05.24 Thu » 『第一回世界幻想文学賞』

 昨日のつづき。
 編集部にわたした「棒」収録アンソロジーというのは、ゲイアン・ウィルスン編 Firsr World Fantasy Awards (Doubleday, 1977)だった。

2008-7-14(World Fantasy 1)

 これは前年に開かれた第一回世界幻想文学大会と、同時に創設された世界幻想文学賞を記念する意味で作られたアンソロジー。編者のウィルスンは、主にホラーの分野で活躍する漫画家/小説家。くわしいことはわからないが、発起人のひとりなのだと思う。

 わが国では誤解されているが、世界幻想文学賞(World Fantasy Award)というのは、もともとホラー系の賞なのである。というのも、アメリカン・ホラーの先達、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトを顕彰するための賞だから。その証拠に受賞者には、ハワードと呼ばれる胸像が贈られる。これをデザインしたのが、ゲイアン・ウィルスンなのだ。ちなみにウィルスン自筆のスケッチがあるので載せておく――

2008-7-14(World Fantasy 2)

 ご覧のとおり、イースター島のモアイ像風にラヴクラフトの肖像をかたどったもの。あまりにも不気味なので、受賞者には評判がよろしくなかったという。
 ついでに書いておくと、第一回の世界幻想文学大会は、ラヴクラフトゆかりの地、ロードアイランド州プロヴィデンスで開催された。できるものならマサチューセッツ州アーカムで開きたかったが、信じられないことに、どこにも実在しないので断念せざるを得なかったそうだ。

 さて、肝心の内容だが、目次を書き写すと煩雑なので、簡単な説明でお許し願いたい。

 〈生涯功労賞〉。栄えある受賞者はラヴクラフトの愛弟子ロバート・ブロックだ。短篇「コウモリはわが兄弟」と「かぶと虫」が再録されているほか、受賞スピーチが載っている。このスピーチがユーモラスな語り口ながら、怪奇幻想文学に対する真摯な思いが伝わってくるすばらしい内容。ちょっと感動してしまった。

 〈長篇〉部門。受賞作であるパトリシア・A・マキリップ『妖女サイベルの呼び声』(ハヤカワ文庫FT)の抜粋が収録されている。

 〈短篇〉部門。受賞作は英国ホラー界の重鎮ロバート・エイクマンの “Pages from a Young Girl's Journal”。古風な吸血鬼譚だが、当方には退屈であった。ちなみにエイクマンは特別にエッセイを寄せている。
 このほか候補にあがったT・E・D・クラインの「ポーロス農場での出来事」、スターリング・G・レイニアーの “A Father's Tale”、さらには英国幻想文学賞という別枠でワグナーの「棒」が収録されている。

 〈個人短篇集〉部門。ワグナーが主宰する小出版社カーコサが刊行したマンリー・ウェイド・ウェルマンの Worse Things Waiting が受賞。同書から “Come into My Parlor” と “Fearful Rock” の2篇が転載されている。

 〈最優秀画家〉上記ウェルマンの短篇集や、下記〈ウィスパーズ〉にイラストを寄せたリー・ブラウン・コイが受賞。コイのイラストは4ページにわたって紹介されている。今回、その一部を〈ミステリマガジン〉に載せてもらった。

 〈ノン・プロフェッショナル特別賞〉。ホラー系のセミプロジン〈ウィスパーズ〉を主宰するスチュアート・デイヴィッド・シフが受賞。〈ウィスパーズ〉から小説、コラム、評論、詩が転載されている。書き手はフリッツ・ライバー、デイヴィッド・ドレイク、デニス・エチスンなど。(2008年7月14日)

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