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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.06.02 Sat » 『SFについて』

【前書き】
 以下は2008年7月8日に記したものである。誤解なきように。


 トマス・M・ディッシュが去る7月4日に亡くなった。享年68。自殺だそうだ。なにかやるせない気分に襲われる。

 追悼の意味で、ディッシュのエッセイ集 On SF (The University of Michigan Press, 2005) を読みはじめた。

2008-7-8(On SF)

 さまざまな媒体に書き散らした書評やエッセイを類別し、六つのセクションに収録したもの。このうち講演「SFの気恥ずかしさ」とUFO信者批判「グリニッチ・ビレッジのエイリアン」は邦訳がある。

 ディッシュの批評的態度は一貫していて、SFそのものに本質的にそなわった子供っぽさを批判し、返す刀で幼稚な読者と、それに迎合する出版界を糾弾するというもの。前に紹介した The Dreams Our Stuff Is Made of (1998) は、この観点からアメリカSFをテーマ別に、しかも通史的に分析していて、痛快きわまりない本だった。
 しかし、この本は題材が身近なだけに毒がきつすぎる面がある。

 読んでいて思ったのだが、ディッシュはいってみれば「過激な阪神ファン」なのである。自分のなかに高い理想があり、それを裏切る現状が許せないため、愛する対象に罵声を浴びせるのだ。
 だから、ディッシュは常にいらだち、毒づいている。ときには名指しで作家と編集者を槍玉にあげる。正直いって、読んでいてあまり気持ちのいいものではない。
 まとめて読むのはつらいので、この本はすこしずつ読んでいくことにした。読み終えて書きたいことがあったら、そのときまた書くとしよう。
 いまは故人の冥福を祈るだけである。(2008年7月8日)

【追記】
 この本は国書刊行会から邦訳が出るそうだ。気長に待とう。

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