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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.06.20 Wed » 『レイ・ブラッドベリ――虚構の人生』

【前書き】
 以下は2007年6月15日に書いたものである。誤解なきように。


 いまレイ・ブラッドベリの短篇集を訳している(追記参照)。ちょうど半分終わったところ。頭がすっかりブラッドベリなので、ブラッドベリ関係の本のことを書きたくなった。まずはジョナサン・エラーとウィリアム・F・トゥーポンスの研究書 Ray Bradbury: The Life of Fiction (The Kent State University Press, 2004)から。大判のハードカヴァーで570ページを超える大著である。

2007-6-15(Life of Fiction)

 妙にスキャンダラスになるので、表題をわざと直訳してみたが、じつをいうとこれは不適切。というのも、ご存じのように life には「人生」と「生命」のふたつの意味があり、fiction には「虚構」と「小説」のふたつの意味があるからだ。したがって本書の表題は、これらの言葉のさまざまな組み合わせを意味している。まったく翻訳者泣かせである。

 内容は、ひとことでいって学術書。ブラッドベリの主要著作をとりあげ、その成立の過程をくわしく論じ、改訂によるテキストの異同を詳細に吟味したうえで、テーマを分析している。
 だが、ブラッドベリの作品にはバフチーンのカーニヴァル化やら、ニーチェの道徳論やら、バシュラールの夢想の観念と同じものが見られるという議論がうっとうしい。たしかにその通りかもしれないが、あたりまえのことを小難しく言い換えているだけという気がしないでもない。まあ、学者だからしかたがないか。

 そういうわけで、ふつうの読者にはお奨めしないが、書誌情報は膨大だし、80ページ近い完璧な作品リストが付いているので、持っていて損はない。当方のようにブラッドベリについて書くことがある向きには、むしろ必携だろう。(2007年6月15日)

【追記】
 拙訳『猫のパジャマ』(河出書房新社、2008)のこと。


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