fc2ブログ

SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

2012.05 « 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 » 2012.07

2012.06.28 Thu » 「コナン・ザ・バーバリアン」

 東京創元社様のご厚意で、映画「コナン・ザ・バーバリアン」の試写を見せてもらえた。
http://www.conan-the-barbarian.jp/

 悪い評判ばかり伝わってきていたので、あまり期待していなかったのだが、予想以上に出来がよかった。ロバート・E・ハワードの原作というよりは、ダーク・ホース・コミックス版コナンの忠実な映画化である。非常に暴力的で、血しぶきが飛び、斬られた生首がころがる画面は凄惨だが、これは原作がそういうものだから仕方がない。
 ファミリー向き映画でないのはたしかだが、怪奇味たっぷりの〈剣と魔法〉の世界を楽しむ分には及第点といえる。

 成功の最大の要因は、主演俳優がコナンにぴったりはまっていること。ジェイスン・モモアという人で、北方人種とは正反対の南方系の顔立ちだが、不自然ではないマッチョマンで、ほれぼれするほどかっこいい。ヴィジュアル・イメージは、ダーク・ホース・コミックス版のコナンそのままだ。アーノルド・シュワルツェネッガーのコナンには馴染めなかった当方だが、今回のコナンには満点をさしあげたい。

 あとよかったのは海賊船関連。今回のコナンは、海賊船の上で大立ち回りを演じる。これがセットをうまく利用したアクションで、けっこう見応えがあった。チャンバラ好きにはこたえられないだろう。

 荒涼とした風景もすばらしい。ブルガリアでロケをしたそうだが、寒風吹きすさぶ荒野や、鬱蒼とした森など、まさに原作のイメージどおりだ。

 脚本には難があるし、予算不足か、ときどきセットが急にチャチになるが、それもご愛敬。全体に安っぽい感じは否めないが、それもパルプ・フィクションの味わいだと思えばいい。ジョン・ミリアス版の映画みたいに、変に重厚な線をねらうよりはよっぽどましだ。万人には勧めないが、コナンのファン、あるいは〈剣と魔法〉のファンだったら、大スクリーンで見る価値ありと断言しよう。

 ところで、今年の2月初旬にこの映画の字幕を担当された方からメールをいただいた。地名などの固有名詞を、当方が編纂した《新訂版コナン全集》(創元推理文庫)と合わせるというので、ご丁寧にも連絡をくださったのだ。試写会場でも宣伝担当の方が挨拶に来てくださって、こちらのほうが恐縮してしまった。
 《新訂版コナン全集》に関しては、ろくな評判を聞いたことがなかったので、当方がやった仕事もまったく無駄ではなかったのだと実感できて、逆にお礼をいいたい気分である。

 字幕に「キンメリア」と出る地名が「シメリア」と発音されるのは予想していたが、「ヒルカニア」が「ハイルカニア」、あるいは「アケロン」が「アシェロン」と発音されるのには意表をつかれた。外国語の表記は本当にむずかしい。

蛇足
 映画は6月30日公開とのこと。せっかくのチャンスだが、原作本である《新訂版コナン全集》の宣伝にはまったく活かせないことになった。この機会に合わせようと思って、未刊だった最終第6巻を今年の2月に入稿したのだが、以来ほったらかしになっている。
 まあ、そういう出版社だから、とあきらめの境地である。(2012年4月26日)

【追記】
 この後、原作の魅力について語った一文を映画のパンフレットに寄稿した。ご覧いただければさいわい。


 
スポンサーサイト