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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.07.12 Thu » 『暗黒夢想家連』

 前回ラムジー・キャンベルのことを書いたが、これはスタンリー・ウィアターのインタヴュー集 Dark Dreamers: Conversations with the Masters of Horror (1990, Avon) に載っていた話。20年近く前に拾い読みしただけだったので、本をひっぱりだしてきたのを機に丸ごと読んでみた。

2012-3-28 (Dark Dreamers)

 それにしても表題を「暗い夢を見る人たち」と訳すか、掲題のように訳すかで受ける印象が全然ちがう。ここが翻訳の面白さであり、怖さでもあるわけだ。

 ウィアターはホラー畑では有名なジャーナリストで、小説と映画の双方に通じたライターとして絶大な信頼を得ていた。そのウィアターが、当代一流のホラー作家たちを相手におこなったインタヴューをまとめたのが本書で、翌年のブラム・ストーカー賞ノンフィクション部門を制した。

 まずは登場する面々を列挙しよう――クライヴ・バーカー、ロバート・ブロック、ゲイリー・ブランドナー、ラムジー・キャンベル、レス・ダニエルズ、デニス・エチスン、ジョン・ファリス、チャールズ・L・グラント、ジェイムズ・ハーバート、スティーヴン・キング&ピーター・ストラウブ、ディーン・R・クーンツ、ジョー・R・ランズデール、リチャード・レイモン、グレアム・マスタートン、リチャード・マシスン、ロバート・R・マキャモン、デイヴィッド・マレル、アン・ライス、ジョン・ソール、ジョン・スキップ&クレイグ・スペクター、ホイットリー・ストリーバー、チェット・ウィリアムスン、J・N・ウィリアムスン、ゲイアン・ウィルスン。
 加えて、フィリップ・ナットマンによるウィアターへのインタヴューを巻頭に配している。

 20年前のトップ・リストだが、時は残酷なもので、当時の超一流はいまでも超一流、当時の中堅や有望株は中堅や有望株のままで終わってしまった。超一流にのしあがったのはランズデールくらいだろう(失墜した人は何人かいるかもしれない)。

 このころはスプラッターパンクの登場で、「うるさい」ホラーと「静かな」ホラーの対立が喧伝されており、本書でも頻繁に話題にとりあげられている。まさか両方とも失速し、ホラー小説の市場が壊滅するとはだれも思っていなかっただろう。諸行無常である。

 ウィアターは、意識的にだれにでも同じ質問をするので、答え方のちがいに作家の個性がにじみ出ていて面白い。それらを紹介しているときりがないので、ひとつだけ。

 自己検閲をするかという質問に答えて、お下劣ホラー派の開祖ジェイムズ・ハーバートいわく――
「子供の身になにか起きるという小説は書けない。そこがスティーヴン・キングとわたしの異なる点だ――彼はいつも子供の身にひどいことが起きる小説を書いているからね。まあ、スティーヴは、そうやってその恐怖を悪魔祓いしているんだろうが」

蛇足
 邦訳も出たティム・アンダーウッド&チャック・ミラー編のスティーヴン・キングのインタヴュー集『悪夢の種子』(リブロポート、1993)には、ウィアターによるインタヴューが3篇おさめられ、第5章「恐怖のパートナー」を構成している。本書に収録されたキング&ストラウブのインタヴューは、これらを縮約したものである。(2012年3月28日)

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