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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.07.20 Fri » 『大珊瑚礁の財宝』

 わけあって先日アーサー・C・クラークの海洋ノンフィクション The Treasure of the Great Reef (Harper & Row, 1964) を引っぱりだしてきた。そのわけは、近々ある方が発表するかもしれないので、ここでは触れないでおく(追記参照)。

2011-10-20(Treasure)

 さて、本書はクラークがスリランカに定住し、スキューバ・ダイヴィングに熱中していたころの著作で、クラーク本人が体験した沈没船の宝探しを題材にしている。

 話は1961年にはじまる。クラークの友人で水中カメラマンのマイク・ウィルスンは、スリランカ南東部の沖合にあるグレート・バセスという珊瑚礁で取材を数年来つづけていた(1959年にはクラークも同地へ赴いている)。この年ウィルスンは、14歳と13歳のアメリカ人少年ふたりを同行させていた。三人は水中観察に精をだしていたが、たまたまウィルスンが、古い小型の大砲らしいものを海底に発見した。調べてみると、硬貨のようなものもたくさん見つかった。おそらく近くに沈没船があるにちがいない。
 だが、運悪く、その海域で潜れるシーズンは終わるところだった。満足のいく調査ができないまま、三人はグレート・バセスを離れることを余儀なくされた。

 彼らが持ち帰った硬貨は、アウランゼブ皇帝統治下のムガール帝国で1702年に鋳造されたものだと判明した。ウィルスンは本格的な沈没船探しを秘密裏に行うことを決意する。

 カラー水中映画で成功をおさめていたウィルスンは、調査のために船を建造することにし、準備万端ととのえたうえで、1963年にチームを組んでグレート・バセスにもどった。クラークもチームの一員として同行した。

 調査は難航し、沈没船も船体は原型をとどめていないと判明する。それでも大型の大砲、大量の銀貨、ピストルの銃床などの遺物を引き揚げることに成功した。銀貨の多くは固着したかたまりになっており、そのうちのひとつはのちにスミソニアン博物館に寄贈された。

 以上の顛末をユーモアたっぷりに語ったのが本書。写真が60枚収録されており、非常に楽しい本である。表紙の写真は、ウィルスンが銀貨を調べているところ。背景にグレート・バセスの灯台と周辺の海が合成されている。
 書き忘れたが、本書はマイク・ウィルスンとの共著になっている。

 ところで当方が持っている本は、どこかのハイスクール図書館の廃棄本(学校名は墨で塗りつぶしてある)。当時の青少年は、この本を読んで胸をわくわくさせたのだろうなあ。(2011年10月20日)

【追記】
 ことの起こりは、作家で古本マニアの北原尚彦氏から問いあわせを受けたこと。古い学習雑誌を買ったら、クラークの「大さんご礁の宝」という海洋ノンフィクションが載っていたが、ほかに邦訳はあるのか、というお尋ねである。もちろん、当方は初耳だった。
 くわしいことは、北原氏のweb日記「古本的日常」2011年10月18日の記述をお読みください。

http://homepage3.nifty.com/kitahara/furuhon2011.html#2011/10

 余談だが、以前クラークの科学エッセイ「ベツレヘムの星」を本邦初訳と銘打って翻訳したところ、すでに「賢者の星」として山高昭訳が存在することを北原氏に教えていただいた。あらためて感謝するしだい。

 
 
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