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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.07.24 Tue » 『南極周期』

 ついでにクラークのパロディ短篇が収録されているアンソロジー The Antarktos Cycle (Chaosium, 1999)も紹介しておこう。ただし、当方が持っているのは、2006年に出た第二版のトレードペーパーバックだが。

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 編者のロバート・M・プライスは、クトゥルー神話の研究者としては世界でも指折りの人物。アンソロジストとしても辣腕をふるっており、とりわけゲーム系の出版社ケイオシアムが出しているクトゥルー神話関係のアンソロジーをものすごい勢いで量産している。新紀元社から邦訳が出た『エイボンの書』(2008)というアンソロジーがその一冊なので、どういうものかはわかってもらえるだろう。

 プライスの博識と豊富なアイデアには瞠目するが、同人誌レヴェルの作家を重用する嫌いがあり、アンソロジー自体の価値を下げている感がある。

 表題からわかるとおり、本書は南極をテーマにしたクトゥルー神話関係のアンソロジー。つまり、ラヴクラフトの「狂気の山脈にて」を中核に、その霊感源となった作品、それを霊感源とした作品を配するという趣向だ。収録作はつぎのとおり――

1「南極」H・P・ラヴクラフト (14行の詩)
2「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」エドガー・アラン・ポオ(480枚)
3“The Greatest Adventure” ジョン・テイン(490枚)
4「狂気の山脈にて」H・P・ラヴクラフト(300枚)  
5“The Tomb of the Old Ones”コリン・ウィルスン(330枚)
6「陰気な山脈にて」アーサー・C・クラーク(25枚)
7「影が行く」ジョン・W・キャンベル・ジュニア(170枚)
8“The Brooding City”ジョン・グラスビー(45枚)
9“The Dreaming City”ロジャー・ジョンスン(35枚)

 作者の名前のあとに付したのは、400字詰め原稿用紙に換算した枚数。この本がどれだけ大部かわかってもらえるだろう。ちなみに、初版では、ジュール・ヴェルヌの『氷のスフィンクス』の抜粋が載っていたとのこと。

 未訳の作品はクラークの短篇しか読んでいないので、内容についてはなにもいえないが、書誌情報を補足しておく(追記参照)。

 1は長篇詩「ヨゴス星より」の第十五章を独立させたもの。全体の序詩として収録されている。
 5はウィルスンのファン・サイトに掲載されていた作品で、出版されるのは今回がはじめてだという。
 7は “The Thing from Another World” という別題が採用されている。
 8と9は同人誌レヴェルの作家の短篇。(2009年7月30日)

【追記】
 この後8と9を読んでみたが、どちらとも南極とは関係のないラヴクラフト・パスティーシュだった。つまり、禁断の文献を手に入れた主人公が、超古代都市の実在を確信し、探検隊を組織して秘境へ分けいったところ、怪異に遭遇して身を滅すという話。前者はアフリカ、後者はゴビ砂漠が舞台である。
 この2篇を読んでがっかりしたので、3と5は未読のままになっている。

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