fc2ブログ

SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

2012.07 « 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 » 2012.09

2012.08.05 Sun » 『SFアルゴ探検隊』

 いい機会なのでアンソロジーの話をつづけたい。

 SF入門的なアンソロジーは星の数ほどもあるが、なかでも読み応えのある一冊として、デーモン・ナイト編の A Science Fiction Argosy (Simon & Schuster, 1972) があげられる。題名を直訳すると、レイ・ハリーハウゼンの特撮映画みたいだが、「SF秀作の大船団」くらいの意味だろう。

2006-2-19(Argosy)

 全26篇収録なのだが、驚いたことに長篇が2冊まるまる収録されている。ベスターの『分解された男』(創元SF文庫)とスタージョンの『人間以上』(ハヤカワ文庫SF)である。当時は本国でも絶版で、容易には手にはいらなかったらしい。

 この2作が収録されているのは知っていたのだが、抜粋が載っているのだとばかり思っていた。もっとも、両方を合わせても370ページで、同書の半分にも満たない。さすがに、ハードカヴァーで800ページを超える大冊だけのことはある。
 序文でナイトが「最大にして、もっとも包括的なコレクションを編むことをめざした」といっているが、まさにその通り。自分の好きな作品を全部ならべた感じで、アンソロジスト冥利に尽きるというやつだろう。

 いちばん古い作品が、1931年に発表されたジョン・コリアの「みどりの想い」、いちばん新しい作品が、1969年に発表されたロバート・シェクリイの「こうすると感じるかい?」。収録作品は著名なものが多く、大半は邦訳がある(未訳はたったの5篇)。ハードSFから不条理小説まで、SFのスペクトルはひととおり押さえられており、入門書としては最適だったのだろう。ナイト自身が、「SF中毒患者だった十代の自分に、だれかがこの本を贈ってくれたらよかったのに」と書いているのがほほえましい。

 さて、なんでこの本を買ったかというと、ロバート・M・グリーン・ジュニアの「インキーに詫びる」がはいっていたからである。近いうちに新訳しようと思っているのだ(追記参照)。詳細はまた後日。(2006年2月19日)

【追記】
 本篇は技巧の粋をつくした時間SFの秀作だが、じっさいに新訳して、当方が編んだアンソロジー『時の娘――ロマンティック時間SF傑作選』(創元SF文庫、2009)に収録した。


スポンサーサイト