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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.08.10 Fri » 『月を撃つ』

【承前】
 宇宙開発をテーマにした翻訳SFのアンソロジーを編もうと思っている。腹案はできていたのだが、作品をふやす方向で練りなおすことになり、候補作探しの日々。そういうわけでピーター・クラウザー編の Moon Shots (DAW, 1999)というアンソロジーを読んだ。

2010-2-11 (Moonshots)

 これはアポロ11号の月着陸30周年を祝って企画されたオリジナル・アンソロジー。ゲスト格で招かれたベン・ボーヴァの序文につづいて16の書き下ろし短篇が載っている。邦訳はひとつもないので、日本で本が出ている作家の名前だけあげると――

ブライアン・オールディス、ジーン・ウルフ、ブライアン・ステイブルフォード、コリン・グリーンランド、アラン・ディーン・フォスター、スティーヴン・バクスター、ロバート・シェクリイ、ポール・J・マコーリー、イアン・マクドナルド……。

 錚々たる顔ぶれといえる。アメリカで出た本にしてはイギリス人作家が目立つのは、編者のクラウザーがイギリス人で、編集者・出版人として活躍しているからだろう。

 月をテーマにした作品が集まっているわけだが、リアルな宇宙開発ものはすくなくて、遠未来を舞台にした思弁SFや、現代を舞台にした主流文学風の作品が多い。当方としては当てはずれだが、その点をぬきにしても、作品の出来はいまひとつ。5点満点で採点したら、4点が1篇、3点が4篇、2点が10篇、1点が1篇という結果だった。

 4点がついたのは、ジェイムズ・ラヴグローヴという作家の “Carry the Moon in My Pocket” という短篇。ちなみに作者は、ヤング・アダルト向きの長篇を書いているジェイ・エイモリーと同一人物である。
 ときは1972年、ところはイギリスの地方都市。アポロ計画に夢中の少年ルークは、不良少年のバリーに「月の石が手にはいったから買わないか」と持ちかけられる……といったお話で、おたく少年の肖像を描いた主流文学寄りの作品だが、最後でSFになる。とにかく少年の心模様が巧みに描かれており、共感して涙する人も多いのではないか。これは候補作として拾っておこう(追記参照)。(2010年2月11日)

【追記】
 この作品はじっさいに訳出し、「月をぼくのポケットに」という題名で『ワイオミング生まれの宇宙飛行士――宇宙開発SF傑作選』(ハヤカワ文庫SF、2010)に収録した。

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