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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.08.11 Sat » 『時間と恐怖のあいだ』

 ホラーSFアンソロジー『影が行く』(創元SF文庫、2000)を作っていたとき手に入れたのが、ロバート・ワインバーグ、ステファン・ジェミアノウィッツ(Stefan Dziemianowicz)&マーティン・H・グリーンバーグ編の Between Time and Terror (ROC, 1995)だ。「影が行く」の原文テキストがほしくて買ったのだが、編者の趣味が当方とまったく同じで大喜びした本。

2006-5-13(Between)

 まずはラインナップを見てもらおう――

「宇宙からの色」H・P・ラヴクラフト
「千の足を持つ男」フランク・ベルナップ・ロング
「ヨー・ヴォムビスの地下墓地」クラーク・アシュトン・スミス
「影が行く」ジョン・W・キャンベル・ジュニア
「かれら」ロバート・A・ハインライン
It Happened Tomorrow ロバート・ブロック
「夢魔」レイ・ブラッドベリ
「闇を行く」アーサー・C・クラーク
「父さんもどき」フィリップ・K・ディック
「男と女から生まれたもの」リチャード・マシスン
「地獄の火」アイザック・アシモフ
「悪夢団」ディーン・クーンツ
「ソフト病」F・ポール・ウィルスン
Ticket to Heaven ジョン・シャーリー
「転移」ダン・シモンズ
「オレンジは苦悩、ブルーは狂気」デイヴィッド・マレル
「欲望の時代」クライヴ・バーカー

 新旧の大物をずらりと揃えたうえで、ロングの怪作をまぎれこませるところがにくい。見てのとおり、「怖いSF」と「SFっぽいホラー」を集めている。
 当方の構想とはスミス、キャンベル、ディックが重なったので、ディックは「探検隊帰る」と差し替え、代わりにクーンツの作品を採らせてもらった。
 ちなみに、ブロックの作品は135枚のノヴェラで、機械が人間に対して一斉に叛乱を起こしたら、というパニックもの。いまとなっては読むに値しない愚作。シャーリーの作品は、つまらなかったという記憶しか残っていない。

 それにしてもこのヴォリューム。『影が行く』の倍近い厚さになるだろう。うらやましいかぎりである。(2006年5月13日)

【追記】
 上記のスミス、キャンベル・ジュニア、クーンツの作品を収録したアンソロジー『影が行く』は、しばらく品切れになっていたが、表題作「影が行く」3度めの映画化である「遊星からの物体X ファーストコンタクト」の公開に合わせ、新カヴァーで増刷された。鈴木康士氏がじつに雰囲気のある絵を描いてくれて、うれしいかぎりだ。
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488715014
 
 この後、ロングの怪作も新訳し、一字ちがいの「千の脚を持つ男」として、拙編のアンソロジー『千の脚を持つ男――怪物ホラー傑作選』(創元推理文庫、2007)に収録した。