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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.09.05 Wed » 『生命の星』

 つづいて、ハミルトンの未訳長篇を紹介しよう。The Star of Life (Torquil, 1959)である。〈スタートリング・ストーリーズ〉1947年1月号に発表された同題作品の単行本化。

2005-6-2(Star)

 主人公は人類初の月周回飛行に旅立った宇宙飛行士。ところが、事故が起きて、仮死状態のまま宇宙空間を漂流することになる。2万年後にふたたび太陽系にもどってきて、仮死状態からさめると、そこはヴラメンという種族が圧制を敷き、地球人から宇宙航行の権利を奪っている世界だった。当然ながら主人公は、地球人の不満分子とともに宇宙船を建造し、ヴラメンに反抗を企てる。

 ところが、このあとストーリーは奇妙にねじれていく。もともと胡散臭いやつと思われていた主人公は、地球人のなかで孤立し、むしろ捕虜にしたヴラメンの女に惹かれていくのである。そして最後には苦い苦い結末が待っている。
 翌年発表された『虚空の遺産』と非常によく似たトーンで書かれており、ハミルトンの虚無的な面が十二分に出ているが、『虚空の遺産』にはおよばない。訳す価値はないだろう。

 ちなみに、アポロ13号の事故が起きたとき、ハミルトンはこの作品の冒頭を思いだし、自分があんなことを書いたから事故が起きたのではないか、と奇妙な罪悪感をおぼえたそうである。(2005年6月2日)


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