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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.09.06 Thu » 『向こうはどんなところだい?』

【前書き】
 編訳したエドモンド・ハミルトン傑作集『フェッセンデンの宇宙』(河出文庫、2012)の見本が届いた。〈奇想コレクション〉版の9篇に3篇を増補し、文庫版編訳者あとがきを書き足した新編集版である。

2012-9-5(Fessenden)

 愛着のある本が、新たな形で世に出ることになってとても嬉しい。これを祝して、文庫化決定にさいして書いた記事を公開する。


 前に書いたとおり、この文庫版には音楽CDのボーナス・トラック的感覚で3篇を追加する。具体的には「世界の外のはたごや」、「漂流者」、「フェッセンデンの宇宙(1950年版)」である。

 このうち2篇の翻訳底本に使ったのが、エドモンド・ハミルトンの短篇集 What's It Like Out There ? And Other Stories (Ace, 1974) だ。

2012-6-3(What's)

 ハミルトンはパルプ作家の悲哀をかこった人で、あれほど多くの短篇を書きながら、それが本にまとまることは珍しかった。連作をのぞけば、1936年にイギリスで出た The Horror on the Asteroid & Other Tales of Planetary Horror につぐ第二短篇集ということになる。

 まずは目次を書き写しておこう。例によって発表年と推定枚数を付す――

1 向こうはどんなところだい? '52 (65)
2 The King of Shadows '47 (55)
3 漂流者 '68 (20)
4 蛇の女神 '48 (80
5 The Stars, My Brother '62 (115)
6 夢見る者の世界 '41 (95)
7 神々の黄昏 '48 (110)
8 太陽の炎 '62 (40)
9 世界の外のはたごや '45 (45)
10 The Watcher of the Ages '48 (40)
11 超ウラン元素 '58 (55)
12 眠れる人の島 '38 (40)

 未訳の2と10は、どちらも秘境小説の枠組みでSF的アイデアを開陳する物語。前者は中央アジア、後者は南米が舞台で、探検家が超古代文明の遺物に遭遇する。4、7、12も一種の秘境小説なので、本書を通読すると、たいていの日本の読者が思い描くのとはべつのハミルトン像が生まれる。

 当方はこの系統の小説が大好きなので積極的に紹介してきたが、さすがに2と10を翻訳する気にはならなかった。『フェッセンデンの宇宙』には「風の子供」という秘境小説がはいっているが、あれは純粋なファンタシーなので、いまでも面白く読める。いっぽう2と10は、エネルギー生物やら超古代文明が生んだ不死身のアンドロイドやらが題材で、古めかしさばかりが目立つのだ。

 未訳で残る5は、当時のハミルトンらしく厭世観を色濃くただよわせた宇宙小説。スペース・オペラ的設定で、地球人のおごりが糾弾される。(2012年6月3日)

 
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