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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.09.23 Sun » 『囁き』

 ついでにスチュアート・デイヴィッド・シフ編《ウィスパーズ》シリーズの第一集 Whispers (Doubleday, 1977) も紹介しておく。ただし、当方が持っているのは、例によって87年にジョーヴから出たペーパーバック版だが。

2012-9-18(Whispers)

 シフの序文につづいて20の作品が収録されている(うち12篇が再録、残りが書き下ろし)。邦訳があるのは、当方の知るかぎり、カール・エドワード・ワグナー「棒」、ロバート・ブロック「道を閉ざす者」、ジョン・クロウリー「古代の遺物」、ラムジー・キャンベル「煙突」の4篇。

 上記以外の面々で目立つのは、デイヴィッド・ドレイク、フリッツ・ライバー、ウィリアム・F・ノーラン、ヒュー・B・ケイヴ、デニス・エチスン、リチャード・クリスチャン・マシスン、レイ・ラッセル、ブライアン・ラムリー、ロバート・エイクマン、ジョゼフ・ペイン・ブレナン、マンリー・ウェイド・ウェルマンといったところだろう。
 
 新旧とりまぜた顔ぶれだが、全体としてはヴェテラン作家の貫禄勝ち。集中ベストはワグナーの傑作だが、つぎに来るのはブロック、ブレナンといったオールド・タイマーの作品だ。

 ブロックの作品は、短篇集『殺しのグルメ』(徳間文庫)に訳出されているので、くわしい説明は省くが、作者自身と自作を題材にしたメタ・ホラーであり、自虐をいとわない作風がすばらしい。老いてますます盛ん、という感じだ。

 ブレナンの作品“The Willow Platform”は、悪魔の召喚を題材にした田舎ホラーで、ラヴクラフト・パスティーシュの趣がある。古風だが、迫力は満点。

 あとはロビン・スミスという英国人作家の“The Inglorious Rise of the Catsmeat Man”という短篇が面白い。超自然の要素のない殺人鬼もので、シフも述べるとおり、アンブローズ・ビアスを連想させるブラック・ユーモアたっぷりの作品である

 ちなみに、ラムリーの短篇“The House of Cthulhu”は、雑誌〈ウィスパーズ〉第1号の巻頭を飾った作品だという。超古代大陸を舞台に、邪神クトゥルーの館へ攻めこもうとする蛮人戦士たちの活躍を描いており、「たぶん、プロ作品としては初のヒロイック・ファンタシー版《クトゥルー神話》だろう」とシフは述べている。(2012年9月18日)

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