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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.10.12 Fri » 「廃品置場」のこと

 添野知生さんが書かれたダン・オバノンの追悼文を読んだら、映画「エイリアン」の脚本を執筆したとき、オバノンの頭にあったのはクリフォード・D・シマックの“Junkyard”という作品だった、という旨の記述があった。この作品のことは初耳だったので、早速同作が収録されている短篇集をとり寄せて読んでみた。

 問題の“Junkyard”は、〈ギャラクシー〉1953年5月号に発表された115枚ほどの中篇。永らく埋もれていたが、1988年になってイギリスで出た短篇集 Off-Planet に収録された。
 こんな話だ――

 舞台は辺境の惑星。宇宙船のエンジンらしきものが、バラバラになって散らばっているのを地球の探検隊が見つける。まさに歴史的な発見だ。人類以外に宇宙航行の技術を持つ異星人の痕跡が、はじめて見つかったのだから。
 しかし、調査は遅々として進まないうえ、たいへんな事態が持ちあがる。宇宙船のエンジンを始動させられないのだ。それに関する知識が、乗組員全員の頭からきれいさっぱり消えていたのである。
 やがて、遠方にべつの異星人の宇宙船が発見される。数千年は遺棄されていたらしいが、エンジンが何者かにとり去られた形跡がある。とすると、あとからこの星へ来た宇宙船の乗組員が、自分たちのエンジンを捨て、それを利用したにちがいない。つまり、彼らも自分たちのエンジンを動かせなくなっていたのではないか。
 やがて記憶消失の原因が、着陸地点の付近にそびえる塔とも小山ともつかぬものだとわかってくる。調査してみると、なかに卵のようなものがあり、これが脳から知識を吸いとっては集めていると判明する。だが、調査の過程で乗組員はつぎつぎと知識と記憶を吸いとられ、幼い子供のようになっていく。
 はたして何者が卵を置いたのか。はたまたその目的は。そして探検隊はこの危機を克服できるのか……。

 と書くと面白そうだが、正直いって凡作。文章がスカスカなうえに、ロジックも穴だらけ。
 シマックは田園作家のイメージが強いが、パルプ時代の生き残りだけあって、ときどきE・E・スミスばりの派手なスペース・オペラを書きたがる。『再生の時』(別題『アンドロイドの叛乱』)が好例だが、いずれも失敗作である。
 これもその系統で、シマックの悪いところが出ている。残念ながら邦訳する値打ちはないだろう。

 ちなみに「エイリアン」との類似は、異星人の宇宙船を発見するくだりと、卵のような遺物に遭遇するくだりだけ。ここからあの脚本をひねり出したのが本当なら、オバノンの才能恐るべしである。(2010年3月13日)

【追記】
 オバノンがこの作品の意義を強調したのは、A・E・ヴァン・ヴォート『宇宙船ビーグル号の冒険』(創元SF文庫)の影響を否定するためだったのではないか、という意見を添野氏からいただいた。卓見だと思う。

 余談だが、『宇宙船ビーグル号の冒険』の現行版には当方による解説がついており、そのなかで映画「エイリアン」の関係についても触れている。ご興味の向きは参照されたい。

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