fc2ブログ

SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

2012.09 « 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 » 2012.11

2012.10.14 Sun » バリントン・J・ベイリー四回忌

【前書き】
 本日は不世出のSF作家バリントン・J・ベイリーの四回忌だ。故人を偲んで2008年10月16日に書いた記事を公開する。


 去る14日、英国のSF作家バリントン・J・ベイリーが亡くなったそうだ。腸癌につづく合併症のため。享年71。
 
 スペースオペラの枠組みに、マッドな擬似科学的アイデアを大量にぶちこみ、形而上学的な思弁を繰り広げる作風は、ときに「メタフィジカル・スペース・オペラ」と呼ばれ、作者自身も「SF界のボルヘス」と異名をとった。
 1970年代後半から80年代にかけて、その特異な作風は識者のあいだで高く評価されたが、一般的な人気には結びつかず、晩年は不遇だった。最近はすっかり名前を聞かなくなっていたし、新作の期待もかけていなかったとはいえ、やはり残念でならない。 

 本国と同時期に、わが国でも安田均氏と関西SF研究会の面々に端を発するベイリー小ブームが巻き起こり、大学生になったばかりの当方も、ずいぶんと感化されたものだった。
 プロット作りの下手さが目立つ長篇よりは、アイデアを一点集中で掘り下げた短篇のほうが、はるかに素晴らしく思える。短篇集『シティ5からの脱出』(ハヤカワ文庫SF)は、当方にとって、いまでも聖典のひとつである。

 じつは、ベイリーの短編をいくつか訳したことがある。記憶がたしかなら、以下のとおり(追記参照)――

1 地底潜艦〈インタースティス〉  SFマガジン1990年6月号
2 彼岸への旅  SFマガジン1995年4月号
3 ロモー博士の島  SFマガジン1996年11月号

 なかでも1にはとりわけ愛着があり、それなりのエピソードもあるのだが、その話はつぎの機会に。
 とりあえず、いまは故人の冥福を祈るばかりである。(2008年10月16日)

【追記】
 この後〈SFマガジン〉2009年5月号がベイリーの追悼特集を組み、当方は「邪悪の種子」と「蟹は試してみなきゃいけない」という小説2篇の翻訳を担当した。
 この特集は大森望氏の監修で、ほかには氏の特集解説と翻訳「神銃{ゴッド・ガン}」、追悼エッセイ2篇、邦訳著作解題、主要著作リストで構成されており、ベイリー・ファン必携の内容となっている。
 ちなみに、同じ号ではトマス・M・ディッシュの追悼特集も組まれていた。

 じつはこの追悼特集が組まれたのと同じころ、日本オリジナル版のベイリー傑作選を出そうという話が持ちあがった。しかし、非常に厄介な版権上の問題が生じ、この企画は流れたのだった。かえすがえすも残念だ。



スポンサーサイト