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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.10.16 Tue » 『アルビオンの星々』

 前回のつづき。
 学生時代の数すくない手持ちアンソロジーの一冊というのは、ロバート・ホールドストック&クリストファー・プリースト編の Stars of Albion (Pan, 1979) のことだった。

2008-10-17(Stars)

 じつはこの表紙、デザインの関係で元の絵のよさが消えてしまっている。ロボットが紅茶(カップに描かれたイングリッシュ・ローズに注意)を飲んでいるという絵柄で、まさに「英国SF」を表現しているのだが、そのロボットの顔に文字と枠がかぶさってしまっているのだ。のちに複数のアーティストの作品を集めたSF画集で元の絵を見たときには、本当に驚いたものだ。これではボブ・ノリントンという画家があまりにもかわいそうなので、特記しておく。

 さて、記録を見ると、原書のSFアンソロジーとしては3冊めに手に入れたもののようだ。東京泰文社のシールが貼ってないところを見ると、神田駅前にあった三省堂仮店舗のワゴンセールで買ったものだろう。あのころは、イギリスのSFペーパーバックがごろごろ転がっていたのだよなあ。

 アルビオンというのはイギリスの古名。わが国でいえば「やまと」とか「秋津島」という感じだろうか。表題から想像できるように、当時のイギリスSFの精髄を集めた国威高揚アンソロジーである。
 収録作はつぎのとおり、例によって発表年と推定枚数を付す――

Sober noise of morning in a marginal land ブライアン・W・オールディス '71 (50)
死ぬべき時と場所 J・G・バラード '69 (25)
モナリザ狂想曲 ボブ・ショウ '76 (55)
生なきもの ジョン・ブラナー '67 (60)
娼婦たち クリストファー・プリースト '78 (40)
Warlord of Earth デイヴィッド・S・ガーネット '77 (30)
夜の涯への旅 ロバート・ホールドストック'76 (65)
Dormant soul ジョゼフィン・サクストン '69 (50)
地底潜艦〈インタースティス〉 バリントン・J・ベイリー '62 (45)
旅行者の休息 デイヴィッド・I・マッスン '65 (40)
To the Pump Room with Jane イアン・ワトスン '75 (30)
降誕祭前夜 キース・ロバーツ '72 (100)

 オールディスとサクストンの作品の綴りが先頭をのぞいて小文字ばかりなのは、同書の表記に合わせたため。同書はこの点にこだわっていて、バラード、ホールドストック、ベイリーの作品も同様の表記がなされている。どういう意図なのだろう。

 編者たちがいうように、ここ10年ほどの作品に絞っているので、ニュー・ウェーヴ寄りの作品が多い。そのせいか、陰々滅々したディストピアものばかり。そのなかでベイリーの暴走ぶりはひときわ異彩を放っていた。

 当時邦訳があったのは、バラード、ブラナー、マッスンの作品だけ。張り切ってファンジン翻訳用の秀作を探そうとしたが、当時の語学力では歯が立たない作品が多かった。
 じっさい、オールディス、ガーネット、サクストン、ワトスンの作品は、今回同書を引っぱりだしたついでに初めて読んだ。30年ぶりに胸のつかえがとれた気分だ。
 なかではサクストンの作品が面白い。孤独な中年女のもとを天使のような姿をした宇宙人が訪れて……。SFの要素がメタファーでしかない典型的なニュー・ウェーヴ作品である。

 話をもどすと、ホールドストックの作品はかろうじて良さがわかり、後輩に頼んで訳してもらった。〈BAGATELLE〉3号に載っている「時の鎖縛」がそれである。その後、当方がプロになってから訳し直し、上記の題名で〈SFマガジン〉1992年6月号に載せてもらった。
 ちなみに「不老不死の話――イギリスSFの地下水脈」という特集のなかの1篇だが、この特集は当方が担当した。

 むかし話ばかりで恐縮だが、もうしばらくつづけたい。(2008年10月17日)


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