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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.10.22 Mon » 『アーカム・ハウスの六十年』

 先日ある編集者と話していたら、例によって本の部数の話になった。おわかりだと思うが、いかに翻訳ものが売れないか、という景気の悪い話である。
 そのときふと思いだした本があるので、そのことを書くしだい。幻想文学研究家として有名なS・T・ヨシが編纂した Sixty Years of Arkham House (Arkham House, 1999) だ。

2008-2-5(Arkham House)

 表題どおり、怪奇幻想文学専門の小出版社の雄、アーカム・ハウスの歴史に関する本。といっても、想像されるような内幕ものノンフィクションではなく、出版物のカタログに記事がくっついたものだ。したがって、本の内容はリストと索引が大半。書誌に興味がない人にとっては一文の価値もない本だが、当方にとっては宝物である。

 細かいことをいうと、創立者オーガスト・ダーレスの編纂で1970年に出た Thirty Years of Arkham House の増補版。そこから「アーカム・ハウス――1939-1969」という回顧録が再録され、そのつづきとなる「アーカム・ハウス――1970-1999」をヨシが書き下ろしている。
 ダーレスの回顧録は、私財を投じてまでアーカム・ハウスの経営をつづけたダーレスの奮戦ぶりが胸を打つ。この人がいなかったら、アメリカでは怪奇幻想文学の火はもっと小さなものになっていただろう。出版人としては、ほんとうに偉い人だと思う。
 だが、その苦労話の紹介をはじめると長くなるので、ヨシの記事とともに詳細は省略。ここではべつの話をする。

 この本が面白いのは、出版物のほぼすべてに発行部数が記載されていることだ。それを見ると、すくないもので1000部前後。多いもので5000部前後だとわかる。平均して3000部というところだろうか。
 参考までに書いておくと、最初に出したラヴクラフトの The Outsider And Others (1939) は1268部、この本の元版 Thirty Years of Arkham House は2137部だそうである(この本の部数は書いてない)。
 この数字をどう見るか、いろいろと考えさせられる。

 さて、本書のジャケットは、アレン・コスゾウスキーという人のイラストが飾っている。裏表紙の部分にアーカム・ハウスの社屋がデフォルメされて描かれているので、スキャンして載せておいた。お楽しみください。(2008年2月5日)

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