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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.10.30 Tue » 三つ子の魂

【承前】
 当方はファンジン〈ローラリアス〉に翻訳をふたつ載せてもらった。最初が6号に掲載されたロジャー・ゼラズニイの「ショアダンの鐘」。発行日が1982年2月1日となっているから、その前年に訳したのだと思う。400字詰め原稿用紙で40枚の短篇である。

2008-8-10(Rolarious)

 その冒頭部をかかげる。{}でくくった部分はルビ――

「ラホンリガストの地に生けるものの姿はない。
 現世{いま}をひとつ遡る時代よりその死の領域には、ただ雷鳴の轟きと、石造りの建物や岩を濡らす雨だれの他には音ひとつなかったのである。〈ラホリング砦〉の塔はいまだ健在であった。風化した門からのびる巨{おお}きな拱路が、苦痛と驚愕そして死に喚く凍りついた口のように、ぱっくりと口をあけていた。辺り一帯は不毛な月の光景を思わせた。」

 久しぶりにこの文章を読んで、思わず苦笑が出た。なんとも力みかえった文章で、無駄な言葉の多さに目をおおいたくなるが、語彙そのものは、いまとあまり変わってないからだ。「おれは25年のあいだ、ほとんど進歩がなかったのだなあ」とつくづく思ったしだい。

 ちなみに、本篇は《ディルヴィシュ》シリーズの本邦初訳(のはず)。なんでいきなり第3作を訳したかというと、これしか原文が手にはいらなかったからだ。テキストにはディ・キャンプ編のアンソロジー Warlocks and Warriors (1970) 所収のものを使用したが、同書を所有されている方にコピーをもらったのだった。

 《ディルヴィシュ》シリーズの中短篇が単行本 Dilvish, The Damned (Ballantine) にまとまったのは1982年。その邦訳『地獄に堕ちた者ディルヴィッシュ』(黒丸尚訳/創元推理文庫)が出たのは1988年であった。(2008年8月10日)

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