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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.11.02 Fri » 『黒衣の旅人』

 前回ジョン・ブラナーの《黒衣の旅人》シリーズについて触れたが、知らない人が多いと思うので紹介しておく。

 ブラナーといえばSF作家の印象が強いが、これは純正ファンタシーの連作。黒衣の旅人という謎の人物が、永劫の時をさすらいながら、混沌/エントロピーと闘い、人間を守護しようとする物語で、舞台となる異世界を造ったのが黒衣の旅人自身だとほのめかされる。
 活劇タイプの〈剣と魔法〉ではないが、ヴァンスの諸作やムアコックの《エターナル・チャンピオン》ものと似た感触がある。黒衣の旅人は人間の味方だが、その愚かさに諦念をいだいており、悪人には容赦がない。そのため、非常にブラックな味わいとなっている。

 シリーズ第一作は1960年に〈サイエンス・ファンタシー〉に発表されたが、シリーズ化は考えていなかったらしく、これだけほかとは毛色がちがう。その6年後に第二作(昨日題名が出た〝Break the Door of Hell〟)が前掲誌の後身〈インパルス〉に発表され、その続編が70年と71年に〈ファンタスティック〉に発表された。この4作をまとめたのが The Traveler in Black (Ace, 1971) というわけだ。クレジットはないが、表紙はディロン夫妻だと思う。

2006-5-28(Traveller)

 この後1986年に1篇を増補した The Compleat Traveller in Black (Bluejay) が出たが、そちらは持っていない。
 というのも、あまり面白くなくて、増補版を買う気は起きないからだ。
 黒衣の旅人自身は基本的に傍観者であり、人間の愚行が延々と列挙される。その羅列のしかたが単調で、盛りあがりに欠けるのだ。リン・カーターが『ファンタジーの歴史――空想世界』(東京創元社)のなかで誉めていたので飛びついたが、期待はずれであった。傑作はそう簡単には見つからないのである。(2006年5月28日)


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