fc2ブログ

SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

2012.10 « 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 » 2012.12

2012.11.03 Sat » 『死の鳥物語群』

【前書き】
 元の日記では、ジョン・ブラナーの The Traveler in Black をとりあげた際、表紙絵を担当したディロン夫妻の絵をもっと見たいという声が寄せられた。したがって、この後しばらくディロン夫妻シリーズとなったが、表紙絵をアップするだけの回が延々つづくのも芸がないので、今回は選りすぐりの5冊にかぎって紹介することにした。


 レオ&ダイアン・ディロン表紙絵シリーズをはじめる。
 第一弾はハーラン・エリスン Deathbird Stories (Harper & Row, 1975) だ。ただし、当方が持っているのは、翌年にペーパーバック落ちしたときのデル版である。

2006-5-30(Death 2)2006-5-30(Death 1)

 本書は音楽でいうコンセプト・アルバム的な短篇集。つまり、あるテーマにそって(既存の短篇集との重複をいとわずに)作品を集めたうえで、エピグラフと短いブリッジの文章を加え、全体をまとめあげているのだ。そのテーマとは「神」と「暴力」である。

 神といってもユダヤ/キリスト教的な人格神ではなく、もっと原初的な神、つまり人智を超える力をそなえた精霊的存在だ。それらが、人間の信仰心のありようによって廃れたり、復活したり、新たに生まれたりするさまが描かれている。それには暴力と流血がつきものだ、というのがエリスンの認識らしい。

 収録作は全部で19篇。当方の知るかぎり、うち12篇は邦訳がある。具体的には「鞭うたれた犬たちのうめき」、「101号線の決闘」、「バシリスク」、「プリティ・マギー・マネーアイズ」、「ガラスの小鬼が砕けるように」、「竜討つものにまぼろしを」、「ヘレン・バーヌーの顔」、「血を流す石像」、「名前のない土地」、「苦痛神」、「ランゲルハンス島沖を漂流中」、「死の鳥」である。

 見てのとおり、オールタイム級の傑作がゴロゴロしている。「ヘレン・バーヌーの顔」が1960年発表で飛びぬけて古いが、あとは66年から74年にかけて発表された作品ばかり。前衛性と娯楽性を両立させた黄金期エリスンの力をまざまざと見せつけるラインナップだ。

 さすがに未訳作品は一枚落ちるが、なかではミノタウロス神話のイメージを借りて、ある下司男の内面を描いた〝O Ye of Little Faith〟に迫力がある。(2006年5月30日+2012年10月30日)

スポンサーサイト