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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.11.04 Sun »  「バシリスク」

 ディロン夫妻シリーズ第二弾は、〈F&SF〉1972年8月号の表紙絵。ハーラン・エリスンの「バシリスク」を題材にしたものだ。

2012-11-3(basilisk)

 〈F&SF〉は、掲載作にいっさいイラストをつけない無愛想な雑誌だが、その分表紙には力を入れていて、毎号すばらしい絵が見られる。この号の表紙絵は、そのなかでも屈指の出来映えだろう。

 カヴァー・ストーリーとなった「バシリスク」は、ヴェトナム帰還兵の問題をファンタシーの形であつかった作品。エリスンのトレードマークである「怒り」と「暴力」が炸裂し、強烈な印象を残す力作である。
 自称愛国主義者の愚かさを容赦なく描きだしたことで、一部で猛反発を呼んだという。それだけ痛いところを突いたのだろう。
 もっとも、ここに描かれる愚行は、当時のアメリカにとどまらず、人間社会に普遍的に見られるものだ。もちろん、いまの日本も例外ではない。エリスンの透徹した目は、人間の本質を見ぬいていたわけだ。

 ディロン夫妻の絵は、小説のクライマックスを象徴的に描きだしており、たとえば、つぎの文章と呼応する――

「そして遠くで、暗黒のもやを越えたかなたで、その兜をかぶった神は、万物を見おろす玉座に坐り、忠実なバシリスクを足もとにひきよせて、にんまりとほほえんだ」(深町眞理子訳)

 この神の名前は、最後に明かされる。

 邦訳は〈SFマガジン〉1974年4月号に載ったあと、ジョー・ホールドマン編のアンソロジー『SF戦争10のスタイル』(講談社文庫、1979)に収録された。
 余談だが、〈SFマガジン〉掲載版は、当方がはじめて読んだエリスンの作品である。この一作に衝撃を受けた中学生は、すぐにハヤカワ・SF・シリーズ版『世界の中心で愛を叫んだけもの』を買ってきて、エリスンのファンになったのだった。

【おまけ】
 〈F&SF〉1973年3月号は、エリスンの「死の鳥」をカヴァー・ストーリーとしている。表紙絵を担当したのは、もちろんディロン夫妻。とはいえ、あいにくこの号は持っていないので、ISFDBから借りてきた画像をお見せする。

2012-11-3(death)

やっぱりこの号も買うしかないか。(2012年11月3日)

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