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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.11.08 Thu » 『二重時間人』

 ディロン夫妻表紙絵シリーズ最終回は、ボブ・ショウの The Two Timers (Ace, 1986) だ。これも伝説の叢書《エース・サイエンス・フィクション・スペシャル》中の一冊。

2006-6-1(Two Timers)


 ところでこの叢書には、前回の『パヴァーヌ』のように一枚絵の表紙と、本書のように上が幾何学デザイン、下がイラストと二段に分かれた表紙があるのだが、なにか規則性があるのだろうか。刊行の時期によるものかと思ったが、そうでもないらしい。どなたかご教示ください。

 さて、本書はドッペルゲンガー・テーマの変種ともいうべき時間SF。最愛の妻をレイプ犯に殺害された男が、べつの時間線に転移し、そちらの世界で妻を救い、中断された結婚生活をつづけようとする。だが、そのためには邪魔者となるもうひとりの自分を始末しなければならないのだった……。
 巧みなのは、この要約のようにはストーリーが進まないこと。最初のうちは、ねらわれる夫婦の側の視点で書かれているので、かなりの驚きがあるし、妄執にとり憑かれた男の心理描写がはじまると、その狂った論理に慄然とする。

 このままならドメスティックなサスペンスSFの秀作になっただろうが、筋金入りのSFマニアで、A・E・ヴァン・ヴォートに私淑する作者が、そんなチマチマした話で満足するはずがなかった。男の時間線転移が宇宙の歯車をわずかに狂わせ、そのひずみが徐々に広がって、宇宙の破滅へと向かう……という具合に大風呂敷を広げている。それが本筋と水と油で、全体としては水準作にとどまっている。

 ボブ・ショウが大成しなかったのは、資質と志向に齟齬があったからかもしれない。(2006年6月1日+2012年11月4日)

【追記】
 伊藤典夫氏が〈SFマガジン〉1969年5月号の本家「SFスキャナー」で本書をとりあげている、
 ちなみに、本書はサンリオSF文庫の刊行予告にあがりながら、未刊に終わった一冊である。

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