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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.11.11 Sun » 『カル王』

【承前】
 《キング・カル》シリーズ最初の単行本が、King Kull (Lancer, 1967) である。《コナン》シリーズで大ヒットを飛ばしたランサー・ブックスが、《コナン》の姉妹編のような形で出した本だ。

2006-11-2(King Kull)

 プロローグとエピローグとして、《コナン》シリーズの背景として書かれたエッセイ「ハイボリア時代」(追記参照)から抜粋が載せられているのが、まず目を惹く。《コナン》シリーズの一部に見せようとしているのが露骨である。まあ、ハワード自身があと知恵で両者を関連づけたのだから、まちがいではないが。

 このシリーズでハワードの生前に世に出たのは、邦訳のある「影の王国」と「ツザン・トゥーンの鏡」という2篇の小説だけだった。したがって、残りの10篇の小説は、本書が初出である。
 このうち3篇は未完の草稿をリン・カーターが補完したもの。1篇はリン・カーターが大幅に手を加えたもので、例によってハワードの真筆とはいいがたい本になっている。じっさい、著者名もハワードとカーターの連名になっている。

 ハワードは、原稿料が安い上に支払いが遅い〈ウィアード・テールズ〉に愛想をつかし、もっと実入りのいい分野への転身を図っていた。このシリーズの多くはその試みとして書かれており、超自然の要素は抑え気味になっている。ハワードはこれらを〈アーゴシー〉をはじめとする一流の冒険パルプ誌に投稿したが、人気作家のひしめくこの市場に彼の食い入る余地はなかった。ハワードはしかたなく〈ウィアード・テールズ〉を主要な活躍舞台とし、こうして擬似歴史冒険小説に魔法の要素を大きく加味した《コナン》シリーズが誕生したのだった。
 災い転じて福となす、というべきか。(2006年11月2日)

【追記】
 このエッセイは、《新訂版コナン全集》第1巻『黒い海岸の女王』(創元推理文庫、2006)に収録されている。

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