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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

2012.10 « 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 » 2012.12

2012.11.14 Wed » 『血と雷』読了

【承前】
 ロバート・E・ハワードの伝記 Blood & Thunder (Monkey Brain, 2006) を読みおわった。目から鱗の記述満載。ああ、この本が3カ月早く出ていれば。

 著者のマーク・フィンは、テキサス人という側面からハワードを理解しようとする。つまり、これまで流布していた「幼いころにはいじめられ、長じては周囲の無理解に苦しみ、ついにはマザコンで自殺した精神を病んだ作家」というイメージは、テキサスの事情に通じていない者たちの誤解による虚像だというのだ。
 とりわけ北部の人間は、南部の言葉づかいのニュアンスがわからないため、ハワードの言葉を誤解すること甚だしい。さらに、ハワードの自己卑下や韜晦を鵜呑みにしてしまうため、実像とはかけ離れた像を作りあげてきたのだ――自身もテキサス人である著者は、そう断言する。

 もちろん、そのイメージを拡げた張本人はディ・キャンプであり、著者はあとがきでこう述べている――
「二十年ぶりに出たロバート・E・ハワードの本格的伝記の著者として、L・スプレイグ・ディ・キャンプがその著『暗い谷の運命』で行なった断定のいくつかには反駁せざるを得なかった。ぼくは不当な悪意をぬきにそうしようと努めた。ディ・キャンプは北部人(ヤンキー)であり、率直にいって、無理のない面もあったからだ。いろいろな意味で、ぼくがこの本をこういう風に書くことに決めたのは、『暗い谷の運命』に猛然と反発したからだった。ディ・キャンプの仕事の気に入らなかった点について考え、そういう真似は絶対にしないように努めた」

 したがって、著者はテキサス史とのかかわりからハワードの人生を再構成しようとする。本当に教えられることばかりだった。
 その成果は、かならず《新訂版コナン全集》に反映させる。とにかく、事実誤認だけは正さなくては。(2007年2月2日)

【追記】
 上記のとおり、本書に準拠してハワード小伝を書いた。当方が編纂した《新訂版コナン全集》全集(創元推理文庫)の3巻から5巻にかけてである。数多くの新事実を記載したので、古くからの読者にぜひ読んでもらいたい。

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