fc2ブログ

SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

2012.10 « 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 » 2012.12

2012.11.16 Fri » 『二丁拳銃のボブ』

 ベンジャミン・スズムスキー編 Two-Gun Bob: A Centennial Study of Robert E. Howard (Hippocampus Press, 2006) は、題名どおりロバート・E・ハワード生誕100周年に合わせて刊行された研究書。マイクル・ムアコックの前書き、編者の序文につづいて、13篇の評論が収録されている。そのうち2篇はイタリア人研究家の寄稿である点が目を惹く。

2012-11-13(Two Gun)

 40年を超えるハワード研究の歴史を踏まえたうえで、これまで等閑視されてきた分野に焦点を当てる、というのが編者のねらい。具体的には、同人誌活動、自伝的小説、探偵小説、詩、東洋冒険小説《エル・ボラク》シリーズ、SF、シリアスなボクシング小説などに的を絞った研究だ。
 
 もっとも、編者が「質より量」(There is strength in numbers.)という考えの持ち主だからか、評論の水準はあまり高くない。学術論文の形はととのっていても、作品の要約にとどまっているものも散見する。それでも、テーマ自体が珍しいので、それなりに勉強になる。

 特に読み応えのあったのが、自己のハワード体験を語りながら、ハワードという作家の本質に迫っていくムアコックの“Robert E. Howard: A Texan Master”、《ブラン・マク・モーン》シリーズの背景となった史実を探るS・T・ヨシの“Bran Mak Morn and History”の2篇。
 あとはテーマ自体の面白さでスズムスキー自身の“Cimmeran Gloves: Studying Robert E. Howard's Ace Jessel from the Ringside”の名をあげておこう。黒人を主役にすえたボクシング小説の研究を通し、ハワードが当時の人種偏見に囚われていなかったことを証そうとする評論である。

 おっと、書き忘れたが、本書の表題は先輩作家H・P・ラヴクラフトがハワードにつけたあだ名から来ている。ふたりは文通だけのつきあいだったが、尊敬の念をいだきあい、ときには激しく意見を闘わせたことが知られている。ハワード自身も、このあだ名を喜んだのではないだろうか。(2012年11月13日)

 
スポンサーサイト