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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.11.26 Mon » 『ロボットに尻尾はない』

【承前】
 某誌からの依頼でヘンリー・カットナーの作品選びをすることになった。未訳・既訳合わせて10篇ほど読み、とりあえず未訳と既訳を1篇ずつ推薦したら、めでたく前者が採用された。
 某誌というのは、H書房のMM。ちょっと面白い特集を組むそうなので、今月末の情報公開を待たれたい(追記参照)。

 カットナーという人は、時期によって作風を猫の目のように変えたことで有名だが、現在では主にユーモアSFの書き手として記憶されている。その路線の代表作が、泥酔すると大発明をするが、酔いがさめるとなにを発明したかさえ憶えていない困った科学者を主人公とする《ギャロウェイ・ギャラハー》シリーズだ。
 このシリーズは5篇あり、Robots Have No Tails (Gnome, 1952) にまとめられている。ただし、当方が持っているのは1973年に出たランサー版のペーパーバック。この版には、夫人であり共作者であったC・L・ムアーによる序文が付されている。
 それによると、主人公の名前は最初ギャロウェイだったが、第二作が書かれたとき、作者がこれを忘れてギャラハーとしてしまった。その後、カットナーは主人公の名前をギャロウェイ・ギャラハーとして首尾一貫した説明をつけたのだという。まさにギャロウェイ・ギャラハー流の論理ではないか。

2011-4-6(Robot Has No Tails)

 目次を簡略化して記す(題名のあとの数字は発表年月。掲載誌はすべて〈アスタウンディング・サイエンス・フィクション〉である)――

1 うぬぼれロボット  1943-10
2 ギャラハー・プラス  1943-11
3 世界はぼくのもの  1943-6
4 Ex Machina  1948-4
5 次元ロッカー  1943-1

 未訳の4はこんな話だ――

 万年金欠病のギャロウェイ・ギャラハーのもとに耳よりな仕事が持ちこまれる。ハンター向けに、すこぶる危険でスリルを味わえると同時に絶対安全な動物を用意してくれれば5万ドル払うというのだ。ただし、1時間以内にという条件つきである。

 翌朝、ギャラハーが目をさますと、依頼主の姿がない。ギャラハー家の居候で、孫に輪をかけて飲んべえの爺さんの姿もない。代わりに見慣れない発電機のような物体が室内にあり、ギャラハーの視野の端をときどき黒い影がよぎる。ギャラハーが酒を飲もうとすると、グラスを口もとに運ぶ途中でいつも酒が消えてしまう。いったどういうことなのか。
 思案するうちにギャラハーは、依頼主のパートナーに殺人容疑で訴えられ、さらには祖父殺害の嫌疑までかけられる。果たして、ギャラハーは身の証を立て、5万ドルを獲得できるのか?

 ギャラハーには、ものすごく有能なわりに、ナルシシストすぎて役に立たない(が、最後には役に立つ)ロボットの助手がいる。表紙に描かれているのが、その〈うぬぼれロボット〉ジョーである。
 画家の名前はどこにも記載されていないが、手持ちの資料によるとロン・ウォロツキーとのこと。

 それにしても、古い本なので糊が駄目になっており、ページをめくるたびにパラパラと剥がれ落ちていくのが悲しかった。本は読むものではなく、飾っておくものということか。(2011年4月6日)

【追記】
 早川書房の〈ハヤカワ・ミステリマガジン〉のこと。同誌2011年7月号が「ゲゲゲのミステリ〈幻想と怪奇〉」という特集を組むことになり、その作品選びに協力したのだった。

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