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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.12.07 Fri » 『ベムAGAIN』

 しばらく前になるが、『ベムAGAIN』(ネオ・ベム、2012)という私家本を読んだ。昨年亡くなったビッグ・ネーム・ファン、岡田正也氏の追悼本である。

2012-10-8(BEM)
  
 名古屋に古典SFの世界的研究家がいるという噂は前々から聞いていた。パルプSFに関して野田昌宏氏に助言したり、横田順彌氏の『日本SFこてん古典』に資料を提供したりといった話だ。しかし、岡田氏が活躍したのは主に1960~70年代であり、当方がファン活動をしていた時期とはずれていたので、氏の仕事に触れたことはなかった。

 さて、その岡田氏が昨年他界され、氏の業績を再評価する動きが出てきた。その中心人物が、岡田氏の愛弟子ともいうべき作家の高井信氏であり、本書はその高井氏が編んだ岡田正也エッセイ傑作選である。発行はネオ・ベムとなっているが、高井氏の個人事業らしい。

 まあ、こういう経緯やら、岡田氏本人については、親交のあった方々が文章を認(したた)めているので、そちらを参照してほしい(リンク先は最後にまとめる)。

 本書はA5判、本文96ページの小冊子。岡田氏のエッセイ9篇と、高井氏の「編者あとがき」がおさめられている。発表年を見ると、いちばん古いものが1966年、いちばん新しいものが1985年。すべてファンジン(とそれに類するもの)に発表された文章である。

 内容は、基本的にパルプSF、あるいはそれ以前のロスト・ワールド小説礼讃。すでに廃れかけたジャンルへの愛情と哀悼をにじませた文章である。といっても、たんにノスタルジーに浸るのではなく。その現代的意義が消え失せたのを認めたうえで、現代SFには欠けているものを指摘し、古典の魅力を語るというスタイルだ。

 とにかく、当方と趣味が一致しているので、読みながらうなずくことしきり。さらには教えられることも多く、興奮して読みおえた。
 とりわけ、飛行機の誕生とともに産声をあげ、皮肉にもその発達によって息の根を止められたサブ・ジャンルを概説した「大空の秘境」、伝説の秘境小説作家に関する研究「A. Hyatt Verrill と『失われた種族』」、未確認動物に関する蘊蓄をかたむけた「影を求めて」が印象に残った。

 驚くべきは、いずれも一次資料にあたったうえで書かれていること。いまとちがって、それしか手段がなかったわけだから当然といえば当然だが、それに費やした労力を考えると粛然とせざるを得ない。いやはや、たいへんな人がいたものだ。
 いちどでいいから、お目にかかってお話を聞いてみたかった。

【高井信氏のブログ】
岡田正也氏での検索結果
http://short-short.blog.so-net.ne.jp/search/?keyword=%E5%B2%A1%E7%94%B0%E6%AD%A3%E4%B9%9F

岡田正哉(本名)での検索結果
http://short-short.blog.so-net.ne.jp/search/?keyword=%E5%B2%A1%E7%94%B0%E6%AD%A3%E5%93%89

【親交があった高橋良平氏の追悼文】
http://www.webmysteries.jp/sf/takahashi1112-1.html

【本書を枕にした北原尚彦氏のコラム】
http://www.webmysteries.jp/sf/kitahara1207-1.html

 ちなみに、このコラムに合わせて実施されたプレゼントに応募して、当方は本書を入手した。高井氏、北原氏、東京創元社のご厚意に感謝する。(2012年10月8日)
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