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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.12.10 Mon » 『ムーン・プール』

【前書き】
 以下は2005年8月28日に書いた記事である。


 洋書屋に行くことはめっきり少なくなったが、たまに行くと掘り出しものがある。最近手に入れたのが、A・メリットの The Moon Pool (Wesleyan University Press, 2004) だ。

2005-8-28(Moonpool)

 聞いたことのない大学出版局から出た本なので、すっかり見逃していたが、これはちょっとしたものである。

 もちろん、小説自体は初版1919年で各種の刊行本があり、邦訳も出ていた(追記参照)くらいだから、べつに珍しいものではないが、本書の価値はそれ以外の部分にある。
 というのも、マイクル・レヴィという学者が編集し、詳細な註を付したうえで、長文の評論とメリット書誌と評伝を載せているのだ。おまけに39年に〈フェイマス・ファンタスティック・ミステリーズ〉に再録されたときに描かれたヴァージル・フィンレイのイラストが6葉復刻されている。まさに至れり尽くせりというほかない。
 クロス装と紙装があるようだが、当方が持っているのは紙装版である(それでもけっこうなお値段だった)。

 ちなみに、本書は《ウェズリーアンSF初期古典シリーズ》の一冊なのだが、そのラインナップがすごい。ヴェルヌの3冊はまだしも、残りはカミーユ・フラマリオンの Lumen 、ド・グランヴィルの The Last Man、ケネス・マッケイの The Yellow Wave など。いちばんメジャーなのがS・ファウラー・ライトの Deluge なのだから恐れ入る。
 まあプレSF史を研究している学者にしか用のない本だが、集めたくなってくるのが怖い。

 ところで『ムーン・プール』には、月光を浴びると別世界へ開く門という設定で、南太平洋の島に実在する古代遺跡が出てくる。
 じつは当方は、その遺跡へ行ったことがあるのだ。ミクロネシアのポンペイ(旧名ポナペ)島にある石造洋上遺跡ナンマドールがそれだ。
 これは玄武岩の角材をわが国の校倉造りのように積み上げた人工の島。いまでは11世紀ごろに造られたものだとわかっているが、むかしからムー大陸との関連が取りざたされている。
 とはいえ、じっさいに行ってみると、それが妄説だとわかる。要するに大規模な墓であり、むかしの人の土木建築術が優れていただけの話。わが国の神社では、境内に足を踏み入れた瞬間、空気がガラリと変わり、さすがに神域だわいと感じいるときがあるが、そういうこともなかった。まあ、当方が鈍いだけかもしれないが。
 参考までに写真を載せておく。(2005年8月28日)

2005-8-28(Namador)


【追記】
 A・メリット『ムーン・プール』川口正吉訳(ハヤカワ・SF・シリーズ、1970)のこと。 

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