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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.12.15 Sat » 『わが最愛の幻想短篇』

 『千の脚を持つ男』関連話のつづき。

 同書には場違いを承知でジョン・ウィンダムの短篇を入れた。ストレートなモンスター小説がつづくので、毛色のちがった作品が必要だし、逆にこの作品もほかの場所で読むより光って見えると思ったからだ。

 この短篇はマーティン・H・グリーンバーグ編のアンソロジー My Favorite Fantasy Story (DAW, 2000) を拾い読みしているときに見つけた。
 同書は現役のファンタシー作家に「わが最愛の幻想短篇」を選んでもらい、そのコメントとともに作品を載せたもの。珍しくグリーンバーグ単独で編んでいると思ったら、編集の実質は他人まかせなのであった。

2007-10-23(My Favorite Fantasy)

 だれがどの作品を選んでいるのか興味深いので、長くなるが目次を書き写しておく。括弧内が推薦者である――

The Ghosts of Wind and Shadow  チャールズ・デ・リント(タニヤ・ハフ)
魔術師マジリアン  ジャック・ヴァンス(ロバート・シルヴァーバーグ)
Troll Bridge  テリー・プラチェット(ミシェル・ウェスト)
The Tale of Hauk  ポール・アンダースン(ミッキー・ザッカー・ライハート)
うちの町内  R・A・ラファティ(ニール・ゲイマン)
The Gnarly Man  L・スプレイグ・ディ・キャンプ(テリー・プラチェット)
若者よ、口笛吹けばいざ行かん  M・R・ジェイムズ(モーガン・ルリウェリン)
Homeland  バーバラ・キングソルヴァー(チャールズ・デ・リント)
Stealing God  デブラ・ドイル&ジェイムズ・D・マクドナルド(キャサリン・カーツ)
Shadowlands  エリザベス・ウォーターズ(マリオン・ジマー・ブラッドリー)
Mopsa the Fairy  ジーン・インゲロウ(ジーン・ウルフ)
無宿者ライアン  ジャック・ヴァンス(ジョージ・R・R・マーティン)
The Spring  マンリー・ウェイド・ウェルマン(アンドレ・ノートン)
地獄行列車  ロバート・ブロック(リック・ホータラ)
The Dancer from Dance  M・ジョン・ハリスン(スティーヴン・R・ドナルドスン)
お人好し  ジョン・ウィンダム(マット・コステロ)
旅商人の話  チャールズ・ディケンズ(マーガレット・ワイス)
ユニコーン・ヴァリエーション  ロジャー・ゼラズニイ(フレッド・セイバーヘーゲン) 

 知らない名前が多いが、一概に当方の勉強不足とはいいきれない。たとえば、ジーン・ウルフが選んだのは、1869年に刊行された無名の児童書。しかも単行本なので、これだけで同書の四分の一を占める。こういうのを平気で推薦してくるところが、くせ者のくせ者たる所以である。
 あるいは、デ・リントの選んだのは、1950年代おけるある先住民一家の生活を描いた主流小説。マジック・リアリズムといっていえないことはないが、これをファンタシーという人間は百人にひとりくらいだろう。

 未訳の作品のなかでは、そのデ・リントとポール・アンダースンの作品が頭ひとつ抜けている。前者は、現代の荒んだ都市に隠れ住む妖精たちの活動を描いたデ・リント流アーバン・ファンタシー。後者は、死者の蘇生を題材にした北欧神話風の作品。
 アンダースンの作品は、河出文庫から出る予定(だった)〈剣と魔法〉アンソロジーに訳出する話があったが、企画が流れたと思われる。正式な断りはもらっていないが。無念。(2007年10月23日)

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