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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.12.19 Wed » 『異星人たち!』

【承前】
 ジャック・ダン&ガードナー・ドゾワといえば、1976年刊行の Future Power 以来、じつに30年以上にわたって数多くのアンソロジーを世に送りだしている編者コンビだ。その名コンビが2冊めに上梓したのが、「地球へやってきた異星人」をテーマにした Aliens! (Pocket, 1980) である。

2007-10-31(Aliens 1)

 売り出し中だったマイクル・ウィーランのすばらしい絵が表紙を飾っているうえに、ジャック・ゴーハンの手になるイラストが各篇を彩っている。さらに参考図書リストつき。持っていて嬉しい本だ。

2007-10-31(Aliens 2)

 収録作はつぎのとおり――

Four Vignettes  ラリー・ニーヴン
われら被購入者  フレデリック・ポール
千客万来  R・A・ラファティ
そして目覚めると、わたしはこの肌寒い丘にいた  ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
天使の卵  エドガー・パングボーン
おお! ブローベルよ  フィリップ・K・ディック
Be Merry  アルジス・バドリス
ひながた  フレドリック・ブラウン
An Honorable Death  ゴードン・R・ディクスン
現実からのトリップ  ロバート・シルヴァーバーグ
黄金律  デーモン・ナイト

 未訳作品について触れておくと、ニーヴンの作品は、〈ドラコ亭夜話〉シリーズに属する掌編4題。そのうちの1篇は、邦訳のある「われわれの養殖文化の吸収――やつらがやっているのはそれなんだ」である(追記参照)。上に掲げたゴーハンのイラストは、ニーヴンのパートに付されたものだ。
 バドリスのノヴェラは、異星人の血液が地球人の難病を治すことがわかり、異星人が飼い殺しにされている未来の話。陰々滅々。
 ディクスンの作品は、異星人の宗教(?)儀式を描いた文化人類学SFで、植民地主義批判が露骨なメッセージ小説。

 さて、表題を見ると、本書は編者コンビが出していた一連のアンソロジー(題名の最後に「!」がつくのが特徴)の一環に思える。だが、そちらはエースが版元で、主題はファンタシー寄り。したがって、編者たちの仕事のなかで、この本だけが浮いているのである。

 たぶん編者コンビにとって、本書は喉に突き刺さった魚の小骨のようなものだったのだろう。アンソロジストとして大成功をおさめた編者コンビは、本書を新たな形に編みなおすことで、この鬼っ子を成仏させたと思われる。その新たな形というのが、昨日紹介した本だったわけだ。
 シルヴァーグの作品が重複。ディック、ラファティ、ティプトリー・ジュニアが共通という目次、あるいは本書の参考図書リストを見ていると、そんな思いが湧いてくるのだが、考えすぎかな。(2007年10月31日)

【追記】
 この後、残りの3篇「文法のレッスン」、「その話題は打ち切り」、「残酷で異常な話」も邦訳され、同シリーズに属すほかの2篇と合わせて〈SFマガジン〉2010年1月号に一挙掲載された。



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