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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.12.29 Sat » 『サイコショップ』

 いい機会なので、アルフレッド・ベスターの遺作を紹介しておこう。正確には、ベスターが遺した未完の原稿をロジャー・ゼラズニイが書き継いだ作品 Psychoshop (Vintage, 1988) がそれだ。

2012-12-26 (Psycho)

 題名の「サイコショップ」というのは、ローマにある不思議な質屋。店の奥にミニ・ブラックホールが存在し、そこは時間を超越しているため、ありとあらゆる時代から、ありとあらゆる人物が訪れて、精神の一部をべつの特性と交換する場所となっている。

 雑誌記者のアルフが、この店の取材を命じられるのが発端。アルフは店主のアダムと接触し、上に記した事情を聞き出す。どうせだれも信じないから、といってアダムは洗いざらいしゃべってくれたのだ。しかも、アダム自身は超未来からやってきた猫人間(遺伝子操作の産物)だという。

 半信半疑のアルフだが、そこへ客がやって来る。最初は19世紀のアメリカから来た若者。喘息が言語のように聞こえるから、これをとり除いてほしいという。アダムの調べで、喘息は古代ペルシア語の詩だと判明する。アダムは喘息をとり除くかわりに、言葉の意味がわかるようにしてやる。若者は喜んで帰っていく。彼の名前はエドガー・ポオ。

 こういう調子で、店を訪れる者たちの不思議なエピソードがつぎつぎと語られていく。アダムに気に入られたアルフは、店のスタッフに加わり、アダムの乳母だという蛇人間の美女、グローリイと恋仲になる。

 ところで、店の奥には7人の男が宙ぶらりんになっている。かつて店に押し入った泥棒が、事象の地平線にとらわれて、永遠に凍りついているのだという。ある日、アルフはその7人が自分と同じ顔をしているのに気づく。グローリイによれば、彼らはアルフのクローンだというが、それなら自分は何者なのだ?
 これ以後は謎が謎を呼び、宇宙創生にまつわる結末へといたるのだが、くわしいことは読んでのお楽しみとしよう。

 ちょうど真ん中あたりでトーンが変わるので、前半ベスター、後半ゼラズニイなのだろう。『コンピュータ・コネクション』+『砂のなかの扉』といえば、当たらずと遠からずかもしれない。

 要するにファンタシーの定番〈魔法のお店〉ものの変形であり、軽いタッチのコメディである。過度の期待は禁物とだけいっておく。

 ともあれ、遺稿を完成させたゼラズニイも故人となって久しい。諸行無常だなあ。(2012年12月26日)

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