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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.05.13 Mon » 〈宝石〉のSF特集その1

 昨日のつづき。
 〈宝石〉といえば、戦後ミステリの復興に多大な功績のあった伝説の雑誌だが、当方の知るかぎり、SF特集を4回組んでいる。その嚆矢となったのが、1955年2月号の「特集 世界科学小説集」だ。

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 1号でつぶれた(これまた)伝説のSF誌〈星雲〉が1954年12月創刊、昨日ふれた室町書房〈世界空想科學小説全集〉の発刊が1955年1月と並べてみれば、このころ最新の英米SFの影響のもとに、わが国でもSFを根付かせようという機運が盛り上がっていたことがわかる。

 その中心人物のひとりが矢野徹で、〈星雲〉やこの特集のブレーンだったことは明らかだが、この号の目次(図版下)を見ると、ほかにも興味深い名前が見つかる。

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 戦前から戦中にかけてSFを発表していた北村小松は別格としても、室町書房版SF叢書のブレーンだった平井イサク、のちに矢野徹らと科学小説創作集団〈おめがくらぶ〉を結成する夢座海二。このあたりの人脈はどうなっていたのだろうか。詳細をご存じの方はご教示ください(追記参照)。

 編集後記が面白いので、文字遣いを新字に直して一部を紹介する。なにかいろいろと考えさせられる文章だ――

○探偵小説界は一分野としてサイエンスフィクションに重力を置くべきは論をまたないが、これが、科学小説と空想科学小説と二つの呼称に分類されることもちろんだが、今回は共に科学小説と呼ぶ。
○もちろんが続くが、科学は日進月歩、昨日の空想が今日の現実となり、過去ともなる。水爆問題がいい例。だが、空飛ぶ円盤など小説に取扱われたらその分類に議論が湧きそうである。
(中略)
○科学者が、科学小説に限らず推理小説を書きだす新機運がある。すくなくとも探偵小説界の来年度は取材の範囲と、作家的視野がぐんと拡がることはたしかだ。(永瀬)

 ありゃ、前書きのつもりが長くなってしまった。肝心の作品については項をあらためたい。

 ちなみに、星新一が「セキストラ」をひっさげて〈宝石〉に登場したのは、1957年11月号であった。

蛇足。
 矢野徹がアッカーマンの招きで渡米し、かの地のSF事情を見聞してきたのが1953年5月から11月にかけて。渡米直前に江戸川乱歩を訪ねたが、そのときの模様を乱歩が「科学小説の鬼――S・Fの勃興・その略史 附・ヴェルヌ邦訳書誌――」という随筆として発表したのが、同誌1953年8月号である。とくれば、この特集の早さがわかってもらえるだろう。(2008年11月29日)

【追記】
 丘美丈二郎も〈おめがくらぶ〉の同人で、京都を拠点とするミステリ系の同人誌〈密室〉を通じても矢野とは接点があったようだ。代島正樹氏のご教示による。深謝。
 これを機に、『矢野徹・SFの翻訳』(奇想天外社, 1981)を引っぱりだしてきたら、180ページに〈密室〉のこと、181ページに〈おめがくらぶ〉や平井イサク氏のことが書いてあった。もっとあとには、早川書房がSFの牙城になったのは、福島正実よりは社長の早川清の功績のほうが大きい、という意見も書いてあった。本は読み直してみるものだなあ。


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