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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.07.09 Tue » 『時間から出た物語』

【承前】
 つぎにとり寄せたのが、バーバラ・アイアスン編の Tales out of Time (1979, Faber & Faber) というアンソロジー。イギリスの図書館から出た廃棄本である。

2012-12-21 (Tales)

 序文や解説のいっさいない本だが、ラインナップや、アイアスンが編んだべつの本の情報と考えあわせると、どうやらヤング・アダルト向けの本のようだ。
 まず目次を書き写しておく。例によって、発表年と推定枚数を付す――

1 ポーリーののぞき穴  ジョン・ウィンダム '51 (60)
2 去りにし日々の光  ボブ・ショウ '66 (25)
3 時に境界なし  ジャック・フィニイ '62 (40)
4 アリスの教母さま  ウォルター・デ・ラ・メア '25 (65)
5 もののかたち  レイ・ブラッドベリ '48 (45)
6 Time Traveling  H・G・ウェルズ 1895 (15) *「タイム・マシン」からの抜粋
7 Blemish  ジョン・クリストファー '53 (25)
8 愛の手紙  ジャック・フィニイ '59 (35)
9 フォークナー氏のハロウィーン  オーガスト・ダーレス '59 (25)
10 Phantas  オリヴァー・オニオンズ '10 (45)
11 新加速剤  H・G・ウェルズ '01 (40)
12 Trying to Connect You  ジョン・ロウ・タウンゼンド '75 (35)
13 雷のような音  レイ・ブラッドベリ '52 (35)
14 死線  リチャード・マシスン '59 (15)

 4と12が児童文学畑の作品である。

 定番に珍しい作品を合わせた意欲的なラインナップ、といっていえないことはないが、フィニイ、ブラッドベリ、ウェルズと2篇ずつ選ばれている作家が3人もいるとあっては、やや安易な感は否めない。

当方のアンソロジーの選択候補になったのは7と10。結論からいえば、どちらも駄目だった。

 7はファースト・コンタクトもの。未来の地球に銀河連盟からの大使がやってきて、都市化・機械化の進みすぎた文明に失望するが、むかしながらの生活様式を守る変人たちの村に行きあたって……というお話。手塚治虫の漫画みたいだ。これは時間ものではなく、このアンソロジーのなかでは完全に浮いている。作品もたいしたことないが、それ以上に編者の選択に首をひねった。

 10は難破船にタイムスリップをからめた海洋奇談。かなり癖のある文章で、遭難者の錯乱した心理が克明に描写される。が、タイムスリップの仕掛けそのものは他愛ない。労多くして実りすくなしだ。

 せっかくなので12も読んでみたら、これは拾いものだった。
 恋人とひどい喧嘩をした青年が、なんとか彼女に連絡をつけようとする。いま謝らないと、彼女はローマへ飛んでいってしまい、今生の別れとなるからだ。
 しかし、青年はボートで運河を航行しており、あたりに電話というものがない。ようやく荒野のただなかに電話ボックスを見つけたが、回線がどうかしているらしく、なかなかつながらないし、つながってもトラブルつづきで恋人と話ができない。しかも、事故があったから電話をゆずってくれという人たちが、入れ替わり立ち替わりやってくるのだ。見たところ、事故など起きていないのだが……。
 これも一種のタイムスリップものだが、青年の焦燥感が如実に伝わってくる。さすがに『未知の来訪者』(岩波書店)という時間ものSFを書いた作者だけのことはある。
 もっとも、携帯電話が普及したいまとなっては、話そのものが成立しなくなっているかもしれないが。(2012年12月21日)


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