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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.10.08 Mon » 『最後のコール』

 1993年にサンフランシスコで開かれた世界SF大会に参加したとき、ティム・パワーズのサインをもらった。「あなたの本を訳した者だ」と自己紹介したので(追記1参照)、「おれの本を訳すはめになったとは、ご同情申しあげる」と書いてくれた。
 しかし、本の向きが逆さま。ほかのサインを見てもそうなので、やっぱり変わった人なのだろう。

2005-7-26(Last Call 2)

 パワーズがフリッツ・ライバーのファンだと知っていたので、「サンフランシスコといえば、フリッツ・ライバーの街ですねえ」と話をふったら、明らかにこちらを見る目が変わったのを憶えている。そのあとは楽しく話ができたので、ライバーさまさまである。

 本は当時の最新作 Last Call (Willim Morrow, 1992) のペーパーバック版(Avon, 1993)。いま考えればハードカヴァーでなくて失礼だったと思うが、貧乏なのでハードカヴァーを買うという発想がまるでなかったのだ。

2005-7-26(Last Call)

 表題の call はポーカー用語の「コール」。ラスヴェガスを舞台に放浪のギャンブラーが、何千年も生きている「悪の漁夫王」と戦う話で、パワーズがはじめて現代史に材をとり、のちの路線を拓いた意欲作である(追記2参照)。ちなみに世界幻想文学賞受賞作。

 じつは刊行当時、当方がリーディングを担当し、「面白いことは面白いが、日本ではまず受けないので、邦訳を出すまでもない」という評価を下した。この本を面白がるには、伝説のギャングスター、バグジー・マローンとラスヴェガスの関係、エリオットの詩「荒地」、アーサー王伝説と漁夫王、ポーカーとタロー・カード、ユング派心理学/神話學の知識があったほうがいいからだ。
 上記の判断が間違っていたとは思わないが、それ以後パワーズの邦訳が途絶えたことを考えると、慚愧の念に堪えない。
 ごめん、パワーズさん、おれが悪かった。(2005年7月26日)

【追記1】
 18世紀のカリブ海を舞台にしたファンタシー『幻影の航海』(ハヤカワ文庫FT、1991)のこと。のちに映画化に合わせ『生命{いのち}の泉』(同前、2011)と改題のうえ再刊された。

【追記2】
 続篇 Expiration Date (1995) と Earthquake Weather (1997) が出て三部作となった。続篇は2冊ともローカス賞を受賞しており、この三部作への評価は非常に高い。


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