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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.05.11 Sat » 『割れた石への祈り』

 ついでだからダン・シモンズ「ケンタウルスの死」がはいっている作品集を紹介しておこう。シモンズの第一短篇集 Prayers to Broken Stones (Dark Harvest, 1990) がそれだが、当方が持っているのは例によって2年後に出たバンタム・スペクトラ版のペーパーバックだ。表紙絵が恰好いいので、お見せしたかったしだい。変わった題名は、おそらくなにかの引用だろうが、教養がないのでわからない。ご存じの方はご教示願います(追記参照)。

2011-5-17 (Prayers)

 ハーラン・エリスンによる熱烈序文につづいて13の作品がおさめられている。収録作は以下のとおり――

1 黄泉の川が逆流する
2 Eyes I Dare Not Meet in Dreams
3 ヴァンニ・フィッチは今日も元気で地獄にいる
4 Vexed to Nightmare by a Rocking Cradle
5 思い出のシリ
6 転移
7 The Offering *TV台本
8 ベトナムランド優待券
9 イヴァンソンの穴
10 髭剃りと調髪、そして二噛み
11 ケンタウルスの死
12 Two Minutes Forty-Five Seconds
13 死は快楽

 各篇に作者による饒舌な前書きがついている。『ヘリックスの孤児たち』(ハヤカワ文庫SF)でもそうだったが、作者は自作について語るのが大好きらしい。

 人気作家だけあって、かなりの邦訳率だ。
 簡単に補足すると、1はデビュー作、2は長篇『うつろな男』(扶桑社)の原型。5は『ハイペリオン』(早川書房・海外SFノヴェルズ→ハヤカワ文庫SF)に「領事の物語」として組みこまれた中篇(原型のまま海洋SFアンソロジーに入れたいという野望があるのだが、いまのところ実現の見こみなし。残念)。13は長篇『殺戮のチェスゲーム』(ハヤカワ文庫NV)の原型。3と6と9は、オリジナル・アンソロジー『スニーカー』(同前)に書き下ろされた3作で、7は6をTVドラマ用の脚本にしたものである(内容はだいぶちがうらしいが、7を読もうとして挫折したので詳細は不明)。

 残る未訳作品のうち、メモを見ると4には5点満点中2点がついているが、内容はまったく憶えていない。いっぽう12のほうは鮮明に憶えている。
 主人公は宇宙船部品の設計者。かつて上司の圧力に屈し、些細な欠陥があるのを知りながら製品を納入したため事故を招いてしまったという負い目がある。この男は極度の高所恐怖症でもあるのだが、いま会社の重役たちといっしょに飛行機に乗っている。その心の動きを意識の流れ風に追った文芸作品で、宇宙船/航空機の事故をジェットコースターや墜落するエレヴェーターといったイメージで巧みに描きだしている。題名は高度四万六千フィートから墜落するのにかかる時間だという。
 ちなみに、 スペースシャトル〈チャレンジャー〉の爆発事故に触発されて書かれたものだそうだ。(2011年5月17日)

【追記】
 T・S・エリオットの詩「空ろな人間たち」からの引用だと、複数の方から教えてもらった。岩波文庫の『四つの四重奏』におさめられた岩崎宗治訳では「毀たれた石への祈り」となっている。
 ついでに“Eyes I Dare Not Meet in Dreams”も同じ詩からの引用だと判明した。

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