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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.05.08 Wed » 「街角の書店」のこと

【承前】
 逃避としての幻想が生まれる瞬間を幻想小説の形式で描いた作品としては、ネルスン・ボンドの「街角の書店」という短篇が忘れがたい。

 売れない作家が一世一代の傑作を書きあげようとしていた。ちょっと煮詰まって散歩に出たところ、ある書店の前を通りかかった。前から気になっていた店だが、これまでは来るたびに閉まっていた。だが、今日は運良くあいていたのだ。作家は店内にはいり、驚くべきものを見る。書かれずに終わった本の群れだ。では、どんな本が並んでいるかというと――

 ある棚にはシェイクスピア著『アガメムノン』、ジョン・ミルトン著『ブリテンのアーサー王』、マーク・トウェイン著『なまず船長』、ジョン・ゴールズワージー著『粘土の足』、シャーロット・ブロンテ著『暮色深まりゆく荒野』。
 べつの棚にはチャールズ・ディケンズ著『クリストファー・クランプ』、エドガー・アラン・ポオ著『ガーゴイルの眼』、サッカレー著『クーパースウェイト大佐』、アーサー・コナン・ドイル著『シャーロック・ホームズの秘めたる事件』。
 またべつの棚にはジュール・ヴェルヌ著『穴居人』、チャールズ・フォート著『不可視の存在とは何か?』、イグネチウス・ドネリー著『最初の神ハヌマーン』、ワインボウム著『宇宙人』、ラヴクラフト著『悪魔学全史』。

 そして作家は、友人だった無名詩人が未完成のまま遺した詩集や、書きかけの自作が完成した姿で棚に並んでいるのを見つけるのだった……。

 要するに逃避としての幻想の対象を本にしているわけで、本好きにはたまらない作品になっている。傑作や秀作というのとはちがうが、いつまでも心に残る作品だと思う。

 初出は1941年だが、当方は〈ロッド・サーリングズ・ザ・トワイライト・ゾーン・マガジン〉1985年8月号に再録されたものを読んだ。
 一読して気に入り、どこかに翻訳を載せようとチャンスをうかがっていた。やがて〈幻想文学〉から別件で原稿依頼があったとき、こちらから売りこんだ。こうして拙訳が同誌66号(2003)の誌面を飾ったしだい。
 とはいえ、この作品を読んだという人は、わが国にせいぜい1500人ほど。もうすこし多くの人読んでもらいたいと思って、いろいろ策を練っているのである。(2011年5月8日)
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