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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.05.07 Tue » 『デス博士の島その他の物語その他の物語』

 ついでだからウルフの第一短篇集も紹介しておこう。The Island of Doctor Death And Other Stories And Other Stories (Pocket, 1980) である。いまは懐かしき《タイムスケープ・ブック》の一冊で、ペーパーバック・オリジナルで刊行された。
 画家の名前は記載されていないが、表紙絵はドン・メイツの手になるものだと思う。収録作「アイランド博士の島」の一場面を描いている。

2011-5-7 (The Island of Doctor Death)

 この版元は当時《新しい太陽の書》の刊行を進めており、ウルフを大々的に売りだしていた。短篇の名手として玄人筋から絶賛されていても、ウルフはなかなか短篇集を出してもらえなかったのだが、そのおかげでようやく短篇集がまとまったのだ。隔世の感がある。

 本書には1970年から78年にかけて発表された14篇が収録されている。そのうち邦訳があるのはつぎのとおり――

 「デス博士の島その他の物語」、「アイランド博士の死」、「死の島の博士」、「眼閃の奇蹟」、「アメリカの七夜」

 上記5篇に短篇「島の博士の死」をふくむ「まえがき」を加えたものが、国書刊行会から出ている短篇集『デス博士の島その他の物語』というわけだ。

 以上の作品はすばらしいが、未訳の9篇はわざわざ訳すほどの値打ちはない。ウルフのイメージからは想像もつかないほどストレートな宇宙SFもはいっていて、読むとがっかりする人が多いだろう。この9篇は、このまま埋もれさせておいてもかまわないと思う。

 ところで当方がウルフに惹かれるのは、「人間にとって幻想とはなにか」という問題を幻想文学の形で追求している点である。これについては『20世紀SF④ 1970年代 接続された女』(河出文庫)に「デス博士の島その他の物語」を収録したとき、解説にこう書いた――

「SFやファンタジーは、ときに逃避文学だと非難される。だが、人が逃避に走らざるを得ない状況、幻想が唯一の救いとなる状況があるのではないか。ちょうど、マッチ売りの少女がはかない幻影に慰めを求めたように。本篇は、逃避としてのファンタジーが生まれる瞬間をファンタジーの手法でとらえた傑作である」

 逆にいうと、このテーマを追求していないウルフの作品は、当方にとって関心外なのである。(2011年5月7日)


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