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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.06.22 Sat » 『黒い契丹の赤い刃』

 昨日のつづき。
 掲題は「赤と黒」の対比を示すため、意図的に誤訳した。Black Cathay は中央アジアに実在した国カラキタイ(西遼)のことなので、誤解なきように。

 ハワードとの共作に関するテヴィス・クライド・スミスの証言は、Red Blades of Black Cathay (Donald M. Grant, 1971) という本の序文が出典である。

2012-3-11 (Red Blade)

 これはスミスとハワードが共作した歴史冒険小説3篇をおさめたもの。小ぶりのハードカヴァーで、本文125ページの薄い本である。資料によると1091部しか発行されなかったとのこと。デイヴ・カーボニクという人のイラストがはいっているが、たいした絵ではないのでスキャンはしない。

 この本は天使の贈り物その4である。代島正樹氏にあらためて感謝する。

 テヴィス・クライド・スミスは、ハワードがハイスクール最終学年のときに知りあった友人。ハワードと同じく文学と歴史に興味をいだいていたので意気投合し、その友情はハワードの早すぎる死までつづいた。ハワードがスミスに送った膨大な量の書簡は、現在多くが公刊されており、ハワード研究者にとって得がたい資料となっているほか、スミス自身もハワードとの交友を回想したメモワールを著している。
 その本をふくめ、スミスには何冊かの著書があるが、すべて自費出版。例外はこのハワードとの共作だけらしい。

 さて、前述どおり、序文でスミスがハワードとの共作について明かしている。それによると、表題作は「わたしが調査し、ボブが執筆した」。べつの作品は「交互にタイプライターについているうちに、ひとりでにできあがった」。残りの1篇は「わたしが大まかなプロットを作り、ふたりで練ったあと、わたしが執筆した」となる。
 このうち表題作は〈オリエンタル・ストーリーズ〉というパルプ雑誌に掲載されたが、残りの2篇は売れ口がなく、本書が初出となった。

 表題作はハワードの原典に忠実な編集の Lord of Samarcand にも収録されているので、両者をくらべると、雑誌初出時に各章の冒頭にかかげられていたエピグラフが、後年に流布したヴァージョンでは省略されているとわかった。代島さんの名言どおり、「くらべてみないとわからないこともある」ということか。

 表題作は、十字軍に参加したノルマン人戦士が、プレスター・ジョンの国を探せという不可能同然の使命をさずかり東へ向かううち、山賊に襲われていたカラキタイの姫君を助けることになり、その国に滞在していると、チンギス・ハンひきいるモンゴル軍が攻めてきて……という話。
 いきなり戦闘場面からはじまり、85枚ほどの小説の半分は戦闘シーンに費やされているというしろもの。ハワードの冒険小説は、だいたいがこんな感じである。フォーミュラの極致だが、読んでいるあいだは楽しいので、これでいいのだろう。

 白状すると、ほかの2篇は読んでいない。じつは表題作も、べつの短篇集で読んでいたのであった。その本の話は、つぎの岩につづく。(2011年3月11日)


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