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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.10.18 Thu » 『マンモスSF百科事典』

 SF百科事典ならば、ジョージ・マンの The Mammoth Encyclopedia of Science Fiction (2001) を紹介したい。初版はイギリスのロビンスンから出たが、当方が持っているのは、同年にキャロル&グラフから出たアメリカ版である。

2011-3-26(Mammoth)

 これは2003年にフロリダへ行ったとき、たまたま立ち寄ったショッピング・モールの書店で見つけたもの。この店のSFコーナーが驚くほど充実していて、アレステア・レナルズやケン・マクラウドらのイギリス版ハードカヴァーがずらりと並んでいたのが印象に残っている。
 
 こんな本が出ていたのはまったく知らなかったので、中身も見ずに買ってホテルに帰り、本を開いて驚いた。
 なんとこれ、たったひとりの人間が書きあげたSF事典なのだ。大判ペーパーバックで600ページを超える大冊。著者のパワーと執念には、ただただ敬服するしかない。
 あんまり驚いたので、〈SFマガジン〉2004年1月号の「SFスキャナー」欄に紹介文を書いた。以下、それを要約する。

 著者のジョージ・マンはイギリス人。当然というべきか、随所にイギリスびいきの面が見られ、アメリカ中心におちいりがちなこちらのSF観をゆさぶってくれる。

 全体は大きく四つに分かれている。すなわち、SF史の概観、名鑑形式によるSF作品の紹介、事典形式による用語解説、賞関係のリストと詳細な索引だ。
 
 名鑑の部は「ページ上のSF」と「スクリーン上のSF」のふたつから成り、前者は153人の作家・イラストレーターと24の雑誌・ウェブ・ページ、後者は97の映画と20のTVシリーズをとりあげている。

 特徴的なのは古めの大物作家をばっさり切るかわりに、80年代、90年代の新人にページを大きく割いている点。たとえば、フレドリック・ブラウンやエドモンド・ハミルトンの項目がないかわりに、エリック・ブラウンやピーター・F・ハミルトンの項目があるといった具合だ。
 また、各作家の項目に、同傾向の作家・作品を推奨するセクションが設けられている。一例としてブライアン・オールディスの項を見ると、マイクル・ムアコックの『この人を見よ』、トマス・M・ディッシュの『キャンプ・コンセントレーション』、ロバート・A・ハインラインの『宇宙の孤児』、ジーン・ウルフの The Book of the Long Sun があげられている。

 ちなみに表紙絵はリチャード・クリフトン=デイ。じつはロック・バンド、ブルー・オイスター・カルトが1980年に発表したアルバム「カルトサウルス・エレクタス」のジャケット絵の使いまわしである。
 このアルバムの1曲め Black Blade は、マイクル・ムアコックの《エルリック》シリーズに材をとったもので、ムアコック本人が作詞を担当している。そのむかし、当方がすり切れるほど聴いたアルバムであり、書店でこの絵を目にしたときは、その点でも驚いたのだった。(2011年3月26日)

【追記】
 著者のマンは、現在では小説家として活躍しており、短篇「砕けたティーカップ――モーリス・ニューベリーの事件簿」が、スチームパンク特集を組んだ〈SFマガジン〉2010年6月号に訳出されている。


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