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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.11.17 Sat » 『ロバート・E・ハワード、至高の瞬間――ある伝記』

 いい機会なので、新しいハワードの伝記を紹介しておこう。フランシス・ディピエトロの Robert E. Howard, The Supreme Moment: A Biography (Francis DiPietoro, 2008) だ。どうも自費出版らしい。

 2012-11-14 (Supreme)

 簡単にいうと、編年体ではなく、テーマ別にハワードの人生を再構成した伝記である。
 しばらく前に読んだ本だが、そのときは紹介する気が起きなかった。というのも、否定的な言葉を書き連ねるのがわかっていたからだ。

 まず水増しである点が気に入らない。大判のトレードペーパーで300ページだが、本文は228ページまで。あとは付録で、ハワードに関連する資料もあるが、あまり関係のない写真が「時代背景を理解するため」と称して20ページほど載っている。さらには、著者自身の長篇小説の冒頭部分がプレヴューとして30ページ以上も載っているのだ。

 本文も水増し。たとえば第9章にはH・P・ラヴクラフトの小説「銀の鍵」がまるまる再録されている。ハワードの思想を理解する助けになるからだそうだが、べつに入手困難な作品ではない。それなら問題の部分だけを引用すればいいではないか。さらに、この再録が著作権法に抵触しない理由が長々と書いてある。

 上の例に顕著だが、全体に言い訳がましい本なのだ。著者はマーク・フィンの仕事を意識しており、ネット上やファンジン誌上でフィンとやりとりをした結果、しきりに弁解を試みている。だが、綿密な調査をしたフィンに対して、推測でものをいう著者の主張に説得力はない。

 それでも、ハワードの死後、関係者のとった行動を記述した部分は有益だった。というのも、父親のアイザックにしろ、友人だったE・ホフマン・プライスにしろ、その行動はあまり誉められたものではないからだ。これまでの資料では曖昧にされてきた部分であり、そこがはっきり書いてある点はよかった。

 たとえば、アイザックが、妻と息子の葬儀から数カ月後、ふたりの墓を掘り返したという事実は今回はじめて知った。やっぱり本は読んでみるものだなあ、(2012年11月14日)


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