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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.02.16 Sat » 『ジャック・ヴァンスの作品』

 浅倉久志先生からジャック・ヴァンスの書誌をいただいたことがある。ジェリー・ヒューエット&ダリル・F・マレット編 The Work of Jack Vance (Borgo Press, 1994) という本だが、ちょっとそのことを書きたい。

 あるとき浅倉さんから大きめの書籍小包が届いた。訳者謹呈本なら出版社から届くのがふつうだが、これはご本人から。なんだろうと思って封をあけたら、ヴァンスの書誌がはいっていたのである。

2013-2-14 (Wok)

 浅倉さんのメッセージが添えられていて、それによると「ヴァンス・ファンのみなさまにさしあげようと思って注文した」そうで、わざわざ贈ってくださったのだ。しかも「酒井さんと白石さんにもお送りしました」と書いてある。もちろん、酒井さんは酒井昭伸氏、白石さんは白石朗氏のことだ。

 これを読んで、当方は天にも昇る心地になった。なぜなら、浅倉さんが当方をヴァンス・ファン仲間として認めてくださり、敬愛する先輩方と同列に置いてくれたのだから。うれしくてうれしくて、本を持って部屋のなかを歩きまわったのを思いだす。

 その酒井、白石、当方が国書刊行会の《ヴァンス・コレクション》を担当することになったのは、奇遇というべきか、それとも必然というべきか。浅倉さんの遺志を継ぐといえば烏滸がましいが、この企画を成功させることが浅倉さんへの恩返しになるのだから、あらためて、やる気が湧いてくる。

 おっと、本の紹介を忘れるところだった。
 これはボルゴ・プレスが出していた《現代作家書誌》シリーズの第29巻。大判トレードペーパー(ほかにケースつきの愛蔵版や、ハードカヴァー版があるらしい)で、約300ページ。ロバート・シルヴァーバーグの序文、ティム・アンダーウッドの跋文つきである。

 内容は大きく14部に分かれていて、「書籍」、「短篇」、「詩歌」、「雑文」、「その他のメディア」といった部門ごとに詳細きわまりないデータが羅列される。
 ヴァンスの書誌としては、ダニエル・J・H・レヴァック&デイヴィッド・アイルランド編の Fantasms (Underwood-Miller, 1978) というすごい本があるので、それを補完したうえで、あえて差別化を図った節がある。

 たとえば「地図と素描」というセクションがあって、ヴァンスが創作メモの一環として描いた地図やスケッチがリスト・アップされている。もちろん、未発表のものばかりだ。この一事をもってして、本書がいかにマニアックなものか、おわかりだろう。「誤ってヴァンス作とされた作品」のリストまであり、4作があげられている。

 あるいは、書かれずに終わったミステリ長篇の梗概が付録として載っている。これが粗筋のレヴェルを超えて、会話まで書きこまれた草稿。ちょっと驚いた。

 図版満載のレヴァック&アイルランドの書誌とは対照的に、図版が1枚も載っていない無愛想な本だが、ヴァンス・ファンにとっては宝物庫のような書誌である。この本を贈ってくださった浅倉さんに、あらためて感謝を捧げたい。(2013年2月月14日)

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