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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.07.05 Fri » 『腕っぷし自慢の探偵』

 天使の贈り物その9は、ロバート・E・ハワードのパンフレット Two-Fisted Detective (Cryptic Pub., 1984) だ。

2012-7-7 (Two-Fisted)

 これもISBNのない私家版で、限定500部。四六判で、表紙をふくめ全76ページ。表紙絵はスティーヴ・フェビアンが描いている。

 版元は編集にあたっているロバート・M・プライスのプライヴェート・プレス。《ザ・クロムレック・シリーズ》第2巻と書いてある。
 ロバート・E・ハワード関連ファンジンで〈クロムレック〉というのがあり、スタッフの顔ぶれを見れば、両者に関係があるのは明らかだが、くわしいことは不明。詳細をご存じの方がいたら教えてください。

 さて、本書は表題からわかるとおり、ハワードの探偵小説を集めたもの。それも頭脳よりは腕力にものをいわせるタイプで、当時流行していた通俗ハードボイルド小説の線をねらったものだ。

 ハワードが探偵小説に手を染めたのは、純粋に経済的理由からだった。大恐慌のあおりでパルプ雑誌がバタバタとつぶれたり、刊行ペースを落とすようになったりして、ハワードの収入は激減した。そこでハワードは、エージェントを雇って、これまで縁のなかった市場に売りこみを図ることにした。そのエージェントがパルプ小説家あがりのO・A・クラインで、クラインは探偵小説やお色気ものの執筆をハワードに薦めた。

 その結果、ハワードのタイプライターから生まれたのが、ウィアード・メナス(残虐味の強いサスペンス小説。いまでいうスプラッタ・ホラーに近い)、スパイシー(お色気もの)、探偵小説といったジャンルに属す作品だった。

 だが、ハワードは探偵小説を嫌っており、書くのも不得手だった。当然ながら売れ行きは芳しくなく、ハワードはすぐにこのジャンルに見切りをつけた。のちに「読むのも耐えられないのだから、ましてや書くなんて」と吐き捨てている。
 
 というわけで、本書にはマーク・C・セラシーニとチャールズ・ホフマンによる序文のほか、ハワードの生前には未発表に終わった作品3篇と、未完成作品の梗概1篇がおさめられている。すべて本書が初出である。

 そのうちの2篇と梗概は、タフガイ探偵スティーヴ・ハリスンを主人公とするシリーズもの。ハリスンは、名前の明らかにされない港町を根城にする探偵で、荒っぽい捜査で知られている。最大の敵は、謎の中国人が指揮する犯罪組織だ。

 と書けばおわかりのとおり、当時絶大な人気を誇ったサックス・ローマーの《フー・マンチュー》シリーズの亜流。ハワードの名誉のために、こういうにとどめよう――すなわち、ハリスンの行く先々で死体がころがり、事件を解決したいのか、大きくしたいのかよくわからない、と。

 残る1篇は、ブッチ・ゴーマンとブレント・カービイという探偵コンビが主人公。ゴーマンはテキサス出身の大男で、カービイは中肉中背のアーバン・ボーイ。なんだか《ファファード&グレイ・マウザー》シリーズみたいだ。
 もっとも、主人公がちがうだけで、話の中身は《スティーヴ・ハリスンン》ものと大同小異。エジプト帰りの謎の大富豪、彼をつけねらうイギリス人、アフリカから来た暗殺団といった連中が登場し、数十年前の秘密が暴かれる。もちろん、死人がつぎつぎと出る。

 ちなみに、おなじコンビが活躍する小説はもう1篇あるが、こちらも売れ口がなかったそうだ。(2012年7月7日)
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