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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.07.06 Sat » 『給料日』

 天使の贈り物その10は、ロバート・E・ハワードのパンフレット Pay Day (Cryptic Publication, 1986) だ。

2012-7-8 (Pay Day)

 これもISBNのついていない私家版で、表紙を入れて全24ページ。版元クリプティック、編集ロバート・M・プライス、表紙絵スティーヴ・フェビアンという点は昨日紹介したパンフレットとおなじである。ちなみに、目次ページにロバート・M・プライスの署名がはいっている。

 さて、本書には完成した短篇が8篇収録されている。ペラペラの小冊子に8篇だから、ひとつひとつが極端に短いのは容易に想像がつくだろう。いちばん長いもので4ページ、残りはすべて2ページ以下だ。

 これも半ページしかないプライスの序文によると、これらは「実話」と銘打った短篇を載せるパルプ誌向けに書かれたものとのこと。当方も現物を見たことはないのだが、「事実は小説より奇なり」タイプの「実話」を満載した娯楽雑誌はかなり人気があったらしい。まあ、わが国におけるコンビニ本の隆盛を見れば、うなずける話ではある。

 では、その「実話」とはどういうものなのか。2ページしかない表題作を紹介しよう。

 ビル・クラットはうだつのあがらない中年男。だが、今日ばかりは喜ぶ理由があった。給料があがったのだ。これで苦労をかけている妻にピアノを買ってやれる。あるいは、車だって購入できるかもしれない。
 妻のアガサは家計をささえるため、速記者として働いている。彼女のボス、ジョー・スネックは権力も金もあるタイプで、ビル・クラットとしては、スネックがアガサにちょっかいを出すのではないか、と内心おだやかではない。
 さて、喜び勇んでクラットが家に帰ると、アガサがベッドに横たわって泣いている。そして「ジョー・スネックに辱められたの! 彼に……辱め……られたの……あんなやつ……憎い……」
 頭に血が昇ったクラットは、スネックのオフィスに乗りこむ。
「おまえは金持ちだから、罪のない女を辱めてもお咎めなしだと思っているんだろう。そうはいくか!」
 問答無用で鉛の弾丸をお見舞いし、居合わせた簿記係に「おれの住所は知っているな。逃げも隠れもしないぞ」と捨て台詞を残し、クラットは意気揚々と帰宅する。
「アガサ、ところでジョーになにをされたんだ?」
「わたしが書いた詩を読まれたの。あの男、笑い死にしそうだといって……こんなゴミを書いている暇があったら仕事しろ、さもないとクビだぞですって」

 もうすこしましな話もあるが、わざわざ紹介する気はおきない。まあ、こういう水準の「実話」が載っていると思ってください。

 収録作すべてがハワードの生前は未発表に終わった。が、うち2作は1970年代なかばにファンジンに掲載された。そういうわけで、6篇が本書に初出である。(2012年7月8日)
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