2013.07.27 Sat » 『複数の失われた世界』
リン・カーターのつづき。
作家としてのカーターは、シリーズものの長篇を主体に書いていたが、中・短篇もそれなりの数を遺した。しかし、それらが単行本にまとめられる例はすくなく、けっきょく生前に出た短篇集は1冊だけ。それが Lost Worlds (DAW, 1980) だ。

表題の「失われた世界」というのは、アトランティスやムーといった超古代大陸とほぼ同義。カーターという人は、小説を舞台設定で分類するのが大好きで、クラーク・アシュトン・スミスの短篇集を地名別に何冊も編んだほど。同じことを自作でやってみたかったらしく、この本は舞台となる古代世界別にセクション分けされている。すなわち、ハイパーボリア(2篇)、ムー(1篇)、レムリア(2篇)、ヴァルシア(1篇)、アンティリア(1篇)、アトランティス(1篇)である。
このうち邦訳があるのは、〈ハイパーボリア〉の部におさめられた「モーロックの巻物」と「窖に通じる階段」の2篇のみで、これはC・A・スミスとの没後共作。どういうことかというと、スミスが遺した創作メモを基にカーターが書いたもので、実質的にカーターの作品である。
この2篇はロバート・M・プライス編のアンソロジー『エイボンの書』(新紀元社)に収録されているのだが、面白いことに、同書では「モーロックの巻物」はカーター単独名義になっている。さすがに、スミスの関与がゼロの作品を共作にはできなかったらしい。
この2篇と〈ムー〉の部におさめられた“The Things in the Pit”は《クトゥルー神話》に属す作品。後者はラヴクラフトが代作したヘイゼル・ヒールドの「永劫より」のあからさまな模倣で、本人もそれを認めており、「この作品の勿体ぶった文体が大好きなので、敬意をこめて模倣してみた」と述べている。発表する媒体がなかったらしく、本書に初出である。
〈レムリア〉の部におさめられた2篇は、ともに英雄ゾンガーの若いころの冒険を描いたもの。〈ヴァルシア〉の部におさめられた作品は、《キング・カル》シリーズの1篇で、ロバート・E・ハワードとの没後共作。残る2篇はオリジナルの〈剣と魔法〉である。
型どおりの作品が並ぶが、なかでは〈アンティリア〉の部におさめられた“The Twelve Wizards of Ong”がいちばん面白かった憶えがある。《ゾンガー》もの2篇も悪くない。
とはいえ、30年も前に読んだ本なので、記憶が正しいかどうかは保証のかぎりではない。(2011年3月23日)
作家としてのカーターは、シリーズものの長篇を主体に書いていたが、中・短篇もそれなりの数を遺した。しかし、それらが単行本にまとめられる例はすくなく、けっきょく生前に出た短篇集は1冊だけ。それが Lost Worlds (DAW, 1980) だ。

表題の「失われた世界」というのは、アトランティスやムーといった超古代大陸とほぼ同義。カーターという人は、小説を舞台設定で分類するのが大好きで、クラーク・アシュトン・スミスの短篇集を地名別に何冊も編んだほど。同じことを自作でやってみたかったらしく、この本は舞台となる古代世界別にセクション分けされている。すなわち、ハイパーボリア(2篇)、ムー(1篇)、レムリア(2篇)、ヴァルシア(1篇)、アンティリア(1篇)、アトランティス(1篇)である。
このうち邦訳があるのは、〈ハイパーボリア〉の部におさめられた「モーロックの巻物」と「窖に通じる階段」の2篇のみで、これはC・A・スミスとの没後共作。どういうことかというと、スミスが遺した創作メモを基にカーターが書いたもので、実質的にカーターの作品である。
この2篇はロバート・M・プライス編のアンソロジー『エイボンの書』(新紀元社)に収録されているのだが、面白いことに、同書では「モーロックの巻物」はカーター単独名義になっている。さすがに、スミスの関与がゼロの作品を共作にはできなかったらしい。
この2篇と〈ムー〉の部におさめられた“The Things in the Pit”は《クトゥルー神話》に属す作品。後者はラヴクラフトが代作したヘイゼル・ヒールドの「永劫より」のあからさまな模倣で、本人もそれを認めており、「この作品の勿体ぶった文体が大好きなので、敬意をこめて模倣してみた」と述べている。発表する媒体がなかったらしく、本書に初出である。
〈レムリア〉の部におさめられた2篇は、ともに英雄ゾンガーの若いころの冒険を描いたもの。〈ヴァルシア〉の部におさめられた作品は、《キング・カル》シリーズの1篇で、ロバート・E・ハワードとの没後共作。残る2篇はオリジナルの〈剣と魔法〉である。
型どおりの作品が並ぶが、なかでは〈アンティリア〉の部におさめられた“The Twelve Wizards of Ong”がいちばん面白かった憶えがある。《ゾンガー》もの2篇も悪くない。
とはいえ、30年も前に読んだ本なので、記憶が正しいかどうかは保証のかぎりではない。(2011年3月23日)
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