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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.07.10 Wed » 『時を生きる種族』

【承前】
 アンソロジー『時を生きる種族』の表題作を表題作にしたのが、マイクル・ムアコックの短篇集 The Time Dweller (Rupert Hart-Davis, 1969) だ。ただし、当方が持っているのは、71年にメイフラワーから出たペーパーバック版の3刷(1975)である。

2013-7-5 (Time)

 収録作はつぎのとおり。例によって発表年と推定枚数も付す――

1 時を生きる種族  '64 (50)
2 夕暮れからの脱出  '65 (75)
3 The Deep Fix  '64 (150)
4 The Golden Barge  '65 (35)
5 Wolf  '66 (20)
6 Consuming Passion  '66 (25)
7 The Ruins  '66 (20)
8 フェリペ・サジタリウスの快楽の園  '65 (35)
9 山  '65 (30)

 このうち3、7、8、9はジェイムズ・コルヴィン名義で、4はウィリアム・バークリー名義で発表された。

 発表年を見ればわかるが、いわゆるニュー・ウェ-ヴ運動まっただなかのころの作品。J・G・バラードの影響を強く受けた作品群である。寓話的というか、象徴主義的というか、ときに難解な印象をあたえる。
 その好例が8と9で、たぶんこの方向性におけるムアコックの最高傑作だろう。

 いっぽう、連作を構成する1と2は、もうすこし伝統のSF寄り。はるかな未来、滅びゆく地球を舞台に、われわれとはまったくちがう時間概念を持つように教育され、「時を生きる種族」となった者たちの物語だ。
 クラーク・アシュトン・スミスの《ゾシーク》シリーズやジャック・ヴァンスの《滅びゆく地球》シリーズの似た味わいがあり、当方が偏愛する種類の小説である。とはいえ、冒険よりは思弁に重点が置かれており、ニュー・ウェーヴの仕掛け人ならではの野心がうかがえる。
 ちなみに、表紙絵は1を題材にしており、アザラシに似た動物に乗っているのが主人公。ナメクジみたいなのは、「沼蛭」といって、新たな地球の覇者である。

 本書で試された方向性は、作者の70年代を代表する遠未来デカダン時間SF《時の果てのダンサー》シリーズに結実するが、わが国にほとんど紹介されていないのが残念だ。

蛇足
 3の題名は、のちにムアコックが組む3人組ロック・バンドの名前にも使われた。
 4は若書きの寓話だが、のちに長篇化された。(2013年7月5日)


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