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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.06.21 Fri » 『女剣士その他の歴史冒険小説』

 昨日のつづき。

 ダーク・アグネスもの第3作は、永らくジェラルド・W・ペイジが補筆した形でしか読めなかったが、昨年ついに未完ヴァージョンが公刊された。ハワードの歴史冒険小説を集大成した Sword Woman and Other Historical Adventures (Del Rey, 2011) に収録されたのだ。

2012-3-10 (Sword Woman)

 これはデル・レイから出ている一連のハーワド本の最新刊(第11巻にあたる)。表題通りの内容で、14篇の小説、4篇の詩のほか、付録として9篇の未完成作品、スコット・オーデンの序文、ハワード・アンドリュー・ジョーンズの解説がおさめられている。

 邦訳された作品はひとつもないので題名はあげないが、やはりラスティ・バークの肝いりで出た Lord of Samarcand And Other Adventure Tales of the Old Orient (Bison, 2005) に Sword Woman (Zebra, 1977) を合わせたものといえる。小説を読むだけなら買う必要のない本だが、付録と解説が目当てで購入した。ジョン・ワトキッスという画家のイラストが全篇に配されており、これも魅力的で、持っているだけでうれしい本だ。

 ひとつ面白いのは、これまで親友テヴィス・クライド・スミスとの共作とされていた“Red Blades of Black Cathay”が、ハワード単独名義で収録されて いること。スミスは共作について「自分が調査をし、ハワードが文章を書いた」と証言していたが、草稿のくわしい調査から、スミスの貢献度はゼロと判断したらしい。解説を書いたジョーンズは、「作家志望の親友の名前に箔をつけるための処置ではないか」という説を紹介している。

 もうひとつ面白いのは、付録にハロルド・ラムの小説の梗概がはいっていること。ハワードが作家修業の一環として作ったメモらしい。ハワードに影響をあたえた作家としては、ジャック・ロンドン、エドガー・ライス・バローズ、ラディヤード・キプリングらの名前がとりざたされるが、むしろラムを筆頭にあげるべきかもしれない。

 ところで、デル・レイのハワード本は、もともとワンダリング・スターというイギリスの出版社がはじめたプロジェクトの発展・継承版である。つまり、綿密な校訂を経たハワードの真筆だけを集め、未完成作品や創作メモは付録としてそのままの形でおさめたうえ、全篇にイラストを配し、詳細な解説をつけるというプロジェクトだ。
 ワンダリング・スター版はすばらしい内容の超豪華本だったが、製作費がかかりすぎて完売しても利益が出なかったらしい。それをデル・レイが引き取って、普及版が出るようになったわけだ。

 デル・レイのトレードペーパーは、イラストがカラー印刷でない点をのぞけば、まったく文句がつけようがないが、ワンダリング・スターから予定されていた《コナン》シリーズ第3巻は見たかった気がする。ああ、ファンとはなんと身勝手なものか。(2012年3月10日)


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