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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.07.27 Fri » 『複数の前哨』

 Sentinels In Honor of Arthur C. Clarke (Hadley Rille, 2010) は、題名からおわかりのとおり、2008年3月に亡くなったSF界の巨星アーサー・C・クラークに捧げるトリビュート・アンソロジーだ。ハードカヴァーとトレードペーパーの2種があるが、当方が持っているのはもちろん後者である。

2011-3-14(Senteniels)

 編者はグレゴリイ・ベンフォード&ジョージ・ゼブロウスキー。前者はクラーク作品の続篇を公式な立場で書いたこともあるハードSF作家、後者は作家であると同時にSF界の世話役的立場にある人物で、ふたりとも生前のクラークとは親しくしていた。トリビュート・アンソロジーの編者としては、申し分のない人選といえる。

 巻頭の献辞が泣かせる――「サー・アーサー・C・クラークではなく、われらが生涯の友アーサーに捧ぐ」

 この種のアンソロジーは新作書き下ろしと相場が決まっているが、編者たちはそういう手段をとらなかった。基本的に再録、しかもクラーク論やエッセイをふくめるという非常にマニアックな本を作りあげたのだ。さらに、作家によっては小説再録に合わせて書き下ろしのエッセイを寄せてもらうなど、隅々まで配慮が行きとどいている。

 未訳作品の題名をずらずら並べてもしかたないので、簡略化した形で目次を示そう。特記したもの以外は小説である――

1 ダミアン・ブロデリック(評論)
2 ハワード・ウォルドロップ&A・A・ジャクスン四世
3 グレゴリイ・ベンフォード(書き下ろしエッセイ付き)
4 アレン・スティール
5 ジョーン・スロンチェフスキー
6 シーラ・フィンチ
7 ラッセル・ブラックフォード(評論)
8 スティーヴン・バクスター(書き下ろしエッセイ付き)
9 フレデリック・ポール(再録エッセイ付き)
10 「おお、ミランダ!」チャールズ・ペレグリーノ&ジョージ・ゼブロウスキー
11 「血清空輸作戦」ロバート・A・ハインライン
12 アイザック・アシモフ
13 「プリティ・ボーイ・クロスオーヴァー」パット・キャディガン
14 ジェイムズ・ガン
15 クリストファー・マッキターリック
16 ジャック・ウィリアムスン
17 パメラ・サージェント
18 ジョージ・ゼブロウスキー(評論)
19 アーサー・C・クラーク(ゼブロウスキーによる未発表インタヴュー)

 ハインラインとアシモフを並べたあたりは粋なはからい。ウィリアムスンの作品をふくめ、再録アンソロジーだからこそできた芸当である。

 ちなみに版元はSFマニアが立ち上げたスモール・プレス。編者たちは企画を持っていろいろな出版社をまわったが、手をさしのべてくれたのはここだけだったという。

 偉そうに書いてきたが、バクスターの小説(暗黒物質によるビッグ・リップを題材にした静謐な破滅もの)を読んだほかは、エッセイを拾い読みしたくらいなのが情けない。来る19日はクラークの3回忌なので、それまでにインタヴューくらいは読んでおこう。(2011年3月14日)

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