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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2012.07.13 Fri » 『恐怖の貌』

 ウィアターのインタヴュー集をとりあげたからには、この本を紹介しないわけにはいかない。ダグラス・E・ウィンターが当代一流のホラー作家を相手におこなったインタヴューをまとめた Faces of Fear: Encounters with the Creators of Modern Horror である。
 もともとは1985年にバークリーから出たものだが、当方が持っているのは1990年に英国のパン・ブックスから出た改訂版である。

2012-3-29 (Faces of Fear)

 著者のウィンターは、わが国ではおそらくオリジナル・アンソロジー『ナイト・フライヤー』(新潮文庫、1989)の編者としてもっとも知られているだろう。当時のモダン・ホラーの最高水準を示したアンソロジーとして世評の高い一冊だ。評論家や作家としても活動しており、ミステリ『撃て、そして叫べ』(講談社文庫、2001)は邦訳が出たこともある。

 まずはとりあげられた面々を列挙する。登場順に――ロバート・ブロック、リチャード・マシスン、ウィリアム・ピーター・ブラッティ、デニス・エチスン、ラムジー・キャンベル、デイヴィッド・マレル、ジェイムズ・ハーバート、チャールズ・グラント、T・E・D・クライン、アラン・ライアン、ジョン・コイン、V・C・アンドリューズ、マイクル・マクダウェル、ホイットリー・ストリーバー、クライヴ・バーカー、ピーター・ストラウブ、スティーヴン・キング。
 
 じつに11人がウィアターの本と重なっている。これが当時のザ・ベスト・オブ・ザ・ベストということか。

 登場順が面白くて、アメリカの西海岸から東海岸へ移動し、途中でイギリス作家がはさまるという形になっている。
 付録としてホラー購買ガイド、ホラー小説ベスト(1951-1990)、ホラー映画ベスト(1951-1990)が巻末におかれている。

 同じようなコンセプト、同じような面々で作られたインタヴュー集であるにもかかわらず、ウィアターとの本はだいぶ趣がちがう。
  まずウィアターの本が、雑誌などに発表されたインタヴューを集大成したものに対し、こちらは書き下ろし(という言葉でいいのか?)のインタヴュー集であること。
 つぎにウィアターの本が、応答形式で書かれているのに対し、こちらはウィンターが地の文で流れを作り、そこに作家の肉声をあてはめていく形をとっていること(序文でウィンターはチャールズ・プラットの名をあげて感謝しているので、プラットのインタヴュー・スタイルにならったと思しい)。
 さらにウィアターの本が、作家としての日常に関心を示していたのに対し、こちらは作家の人生哲学に焦点を合わせ、深く掘りさげていること。
 これらの点があいまって、ウィアターの本よりはだいぶ歯ごたえのある本になっている。

 と、わかったようなことを書いてきたが、20年近く前に読んだ本なので、内容はほとんど憶えていない。マシスンが愚痴ばかりこぼしていたのは鮮明に記憶しているのだが。

 いまパラパラめくったら、ブラッティが面白いことをいっていた。彼が作家を志したのは、パルプ雑誌〈アンノウン〉に載ったロバート・ブロックの “Time Wounds All Heels” という短篇を読んだからだという。ユーモアたっぷりのゴースト・ストリーらしい。へえ、ブラッティはそういう人だったのか。たぶん20年前にも驚いたのだろうが、あらためて驚いた。 

蛇足
 付録の「ホラー小説ベスト」は、ホラーを広義にとっているので、おやっと思う作品がたくさんはいっている。たとえばピーター・アクロイドの『チャタトン偽書』、J・G・バラードの『残虐行為展覧会』とテクノロジー三部作、イアン・マキューアンの『セメント・ガーデン』、サーバンの『角笛の音の響くとき』、ジム・トンプスンの『おれの中の殺し屋』、ジョン・ウィンダムの『トリフィド時代』と『呪われた村』などだ。なるほど。(2012年3月29日)


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