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SFスキャナー・ダークリー

英米のSFや怪奇幻想文学の紹介。

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2013.04.19 Fri » 〈アムラ〉70号――追悼ジョージ・H・シザーズ

【前書き】
 本日は2010年4月19日に亡くなったアメリカの編集者、ジョージ・H・シザーズの命日である。故人を偲んで、以下の日記を公開する。


 アメリカのSF編集者ジョージ・H・シザーズが、去る4月19日に永眠したそうだ。死因は心臓発作。享年80。

 シザーズといえば、SF雑誌〈アイザック・アシモフズ・サイエンス・フィクション・マガジン〉(1977年創刊。以下IASFMと略。現在の誌名は〈アシモフズ〉)の初代編集者として名高い。〈ギャラクシー〉、〈イフ〉、〈ファンタスティック〉といった老舗がバタバタと潰れた雑誌受難の時代に新しいSF雑誌を軌道に乗せた手腕は、高く評価されるべきだろう。

 当時のIASFMの誌風は、わが国でもほぼリアルタイムで伝えられたので、ご存じの方も多いだろう。具体的には同誌の傑作選『さようなら、ロビンソン・クルーソー』(1978)と『気球に乗った異端者』(1979)が集英社文庫から出たほか、短命に終わった雑誌〈SF宝石〉が同誌と特約を結んでいたのだ。
 これらを見ればわかるとおり、当時のIASFMの基調は「わかりやすさを主眼とした娯楽路線」である。のちに新編集長のもとでシリアス路線に舵を切り、サイバーパンクの牙城、さらにはアメリカSF界のリーディング・マガジンになっていくとはいえ、その礎を築いたシザーズの功績は、同誌の歴史に燦然と輝いている。

 とはいえ、当方にとってシザーズは、ファンジン〈アムラ〉の編集者である。
 アムラというのは、ロバート・E・ハワードが創造した英雄、キンメリアのコナンの異名。この名を冠したファンジンは、〈剣と魔法〉の専門誌で、創刊は1956年。読み応えのある創作やエッセイが載るいっぽう、パロディや戯れ歌なども満載のファンジンらしいファンジンとして知られていた。
 シザーズは1959年に同誌の編集長となり、辣腕ぶりを発揮して、同誌にヒューゴー賞を二回もたらした。

 大学生のころの当方は、このファンジンに憧れをいだいていた。なにしろ、フリッツ・ライバー、ポール・アンダースン、L・スプレイグ・ディ・キャンプといった大御所が顔をそろえ、ファンにまじって〈剣と魔法〉に関して活発に議論しているというのだ。アチラのファンジン自体見たことがなかったし、まさに憧憬の対象だった。

 それが思わぬところから手にはいることになった。当時所属していた〈剣と魔法〉系のファン・グループ、ローラリアスの古参メンバーの方が、ダブリ本だからと気前よくゆずってくださったのだ。このときべつのファンタシー系ファンジンも2冊いただき、天にも昇る心地だったのをよく憶えている。

 書影をかかげたのが、創刊25周年記念号にあたる〈アムラ〉1981年9月号(volume 2 number 70)。副題に Swordplay & Sorcery とあるのに注意されたい。

2010-4-20(Amra 1)

 体裁はB5版40ページ。タイプセットの立派な印刷で、誌面の雰囲気を知ってもらうため、後述のエッセイのページをスキャンしておいた。ご参考までに。

2010-4-20(Amra 2)

 内容は創作3篇(うち1篇は《コナン》シリーズの模作)、エッセイ4篇(ポール・アンダースン、L・スプレイグ・ディ・キャンプほか)、映画「エクスカリバー」評、戯れ歌など。多くのページにE・R・バローズ作品のイラストで有名なロイ・G・クレンケルのペン画が配されている。

 いちばん読み応えがあったのは、“Pseudhistory”と題されたディ・キャンプのエッセイ。これは歴史に関してまちがった知識が流布している例をあげ、その誤謬に関して解説したもの。
 たとえば、ギリシア・ローマ時代のガレー船は、奴隷が漕いでいたと思われているが、じつは漕ぎ手は高度な技能を有した自由人であり、むしろ高給とりであったという。こういうまちがいが広まったのは、ルー・ウォーレスの小説「ベン・ハー」と、チャールトン・ヘストン主演の同名映画が原因である。
 奴隷がガレー船の漕ぎ手となったのは、時代が大幅にくだって15世紀ごろ。イスラム教徒とキリスト教徒の争いが激化し、捕虜をとりすぎて、その働き口にしたらしい。

 こういう具合に、七つの主題に関して蘊蓄をかたむけている。ディ・キャンプという人は、この手の歴史エッセイを書いているときがいちばんいいようだ。(2010年4月20日)


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